2015年→2024年の10年間で日本の建築コストは総じて上昇しました。建築費指数(2015年=100)は物件種別や地域差はあるものの、おおむね130〜140程度(約30〜40%上昇)の水準を示す指標があり、近年は特に上振れしています。
上昇要因は主に次の通りで、①鋼材・合板・セメント・生コンクリートなど主要資材の価格上昇、②職人不足に伴う労務費増、③燃料・輸送費や円安の影響、④脱炭素化対応などによる設備・工程コストの増加。これらが重なり、設計見直しや価格転嫁の動きが進んでいます。
建築コストの上昇について、象徴的な事例に上げられるのが、「中野サンプラザ」の再開発計画です。実質的には “白紙化または再設計” に至ったと言ってよく、建築コストの急激な上昇が計画断念のきっかけとなりました。
こちらのケースでは、当初見込みから2倍近くの費用増が見込まれ、採算性と計画実現の両面で立ち行かなくなったようです。単にコストが上がったというだけでなく、事業構成(公共目的・住宅比率・施設規模)にも調整が入り、それが区側の判断として「当初案の継承という観点から不十分」となったことが計画断念の決め手になったとのことです。
このような事例は他地域・他再開発案件でも出ており、【建築コスト高騰時代】における再開発の難しさを示しています。
建築コストの上昇は、一般世帯にも影響が生じてきています。どんどん新築価格は上がり続け、なかなか一般世帯では購入することが難しい世の中になってきました。地域性はありますが、新築価格に引っ張られる形で中古価格も右肩上がりです。注文住宅の坪単価も軒並み上がり、ハウスメーカーで建築したくてもなかなか予算面で厳しい状況になってきています。
金利市場もハードルになり得るご時世となり、税制優遇等による促進対策に期待したいところです。