一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

ライターにとって文字数は、ただの数字ではありません。文章の設計図であり、呼吸のリズムそのものです。1,000字なら三幕構成、800字なら枝葉を落とす潔さ、2,000字なら背景を厚く描ける。つまり文字数は、どのエピソードを残し、どの表現を削るかを決める基準です。

ところが、原稿を提出したあとで「あと200字増やして」「半分にして」と軽く言われることがあります。もちろん媒体の都合は理解しますが、それはミュージシャンにアニメのオープニング曲を依頼して、秒数きっちりで仕上げてもらったあとに「やっぱり5秒伸ばして」と言うようなもの。曲の構成が崩れるのと同じで、文章もリズムや流れが変わってしまうのです。

しかも実際の作業では、制約に合わせて「載せたいけど泣く泣く削ったエピソード」を捨てていることが多い。私は途中のファイルをいちいち保存しないので、後から「やっぱり増やして」と言われると、一度葬った話をゼロから書き起こす羽目になる。これが一番こたえるのです。

だからこそ大事なのは、事前に文字数をきちんと決めるか、最初から幅を持たせておくこと。そして、もし調整が必要なら「もっと原稿を磨き上げたいから、この部分を厚くしませんか」といった提案型の言い方にしてほしい。単なる「増減の指示」ではなく「質を高める相談」なら、ライターも前向きに応じやすいのです。

要は、調整そのものよりも、その伝え方で原稿の仕上がりも関係性も大きく変わるのだと思います。

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