一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 台湾の公共建築の現場では…

今月はこれまでの作業を継続してこなして過ぎていった感じではあるが、そんな中以前私が台湾のとある公共建築の現場監理をしていたときに関わりのあった方(台湾人)から連絡があった。

 

久しぶりの連絡で驚いたのだが、その方は引き続き台湾でいろんな建設現場を点々とし、現在また別の公共建築の現場で設計事務所側のアドバイザー的なポジションで頑張っているらしい。

 

台湾の公共建築の現場はなかなか一筋縄ではいかない。私が以前に担当していた現場も然り、彼が現在担当している現場も然り。

 

大体よくあるのが、何らかの理由で設計変更せざるを得ない場合、設計変更に際して、大量の資料、書類を作成しなければならない。そして設計変更すると申請上の手間がかかるので、どうしても予定していた工期に遅れが生じる。

 

工事を担当する施工会社は、工期に遅れが生じないよう(市)政府からプレッシャーをかけられる。

→施工会社は工期遅れの理由を設計側が設計変更したからと訴える。

→設計側は可能な限り工事費や工期に影響がでないようなVE案を考える。

→それでも施工会社は施工図作成に時間がかかり、材料の発注スケジュールも狂い、工期遅れが生じると主張。

こうなると施工会社と設計サイドの間でバチバチと責任の擦り付け合いが起きる。この場合両者ともなかなか自分達の主張を曲げない。自分達の側に非があると認めると、万が一将来訴訟問題に発展した場合に不利になるから。

 

・・・とまあ、ざっくり言うとこういったことが良く起きる。

 

私も以前の現場でこういったことをよく目にしていたので、なんか空しく感じたのを覚えている。

 

最初現場が始まった頃は、皆同じ目標に向かって頑張りましょうと一致団結を約束したのに、時間の経過と共にいろんな事が起きると、各自が向くベクトルが歪み始める、結局皆自分達の立場を守ることに必死になり当初の志が段々薄れる、そうすると皆現場での仕事が割に合わないと辞めていく(台湾の人たちは、よりよい職場環境を求めて転職する人が日本に比べて断然多い)。

 

市政府の人たちも建物を予定通り完成する事だけに注力し、完成後実際どういう風に使われるのかは二の次。とりあえず政府として建物を完成させ政治の道具に使いたい思惑を感じる。

 

こういった事案が過去に多く発生し、台湾には盛大に作った割に上手く運用できずに、負の遺産として残された公共建築が多数発生したらしい。

 

こういう状態を中国語では「養蚊子館(yang3wen2zi5guan3)」という。字義通り、蚊を飼っているかのような誰にも使われなくなった建物という意味だ。

 

久しぶりに連絡をくれた台湾の友人にも、今関わっている建築が将来「蚊子館」にならないよう皆で頑張ってください、ということを伝えたのだが、いずれにせよ上手く現場が進むことを願うばかりだ。

 

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大賀 淳史

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