第9回:食事改善を習慣化する:
食事改善は、一朝一夕に結果が出るものではありません。特に育成年代の女子サッカー選手にとって、身体は常に成長・変化しており、パフォーマンス向上のための食事は、単なる体重管理を超えた長期的な取り組みとなります。短期間で体重が戻らなかったり、目標とする体組成の変化が見られなかったりしても、そこで諦めず、地道に続けることが、最終的な成功へと繋がる唯一の道です。この継続力こそが、「力」となり、選手の土台を強くします。食事改善を「歯磨き」のように習慣化するための具体的なステップを、次にご紹介します。
食事改善を特別なことではなく、日常生活の一部として定着させるために、以下の具体的なステップを取り入れましょう。
目標設定:SMART原則に基づく具体的な目標を
単に「体力をつけたい」ではなく、**具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限(Time-bound)**の5つの要素(SMART原則)を満たした目標を設定します。
具体的な目標例:
「○ヶ月後までに、体重を現在の○kgから○kgに増やす(または維持する)」
「今シーズン中に、体脂肪率を○%から○%に抑え、筋肉量を○kg増やす」
「毎日の練習後の30分以内に、おにぎり2個(炭水化物+タンパク質)を必ず補給する」
数値で表せる目標を設定することで、達成度合いが明確になり、モチベーションの維持に役立ちます。目標を達成したら、新たな目標を設定することを忘れないようにしましょう。2. 食事記録:客観的な視点で自分の食生活を分析する
食べたものを記録することは、自分の食生活を客観的に見つめ直すための基本です。
記録すべき内容:
食事の内容: 何を食べたか(主食、主菜、副菜など)
量: どれくらい食べたか(グラム数や目分量でも可)
時間帯: 何時に食べたか(特に練習前後の補食時間)
身体の反応: 食後の調子、胃もたれの有無、練習中のエネルギーレベルなど
手書きのノートでも良いですが、食事記録アプリ(スマートフォンアプリ)を活用すれば、写真で簡単に記録でき、摂取カロリーや三大栄養素(PFCバランス)の自動計算、不足しがちな栄養素のアドバイスなども得られ、より効率的です。3. 周囲の協力体制の構築:チームで取り組むメリット
食事改善は、選手一人の努力だけで完結するものではありません。
保護者: 食材の選択、調理法、補食の準備など、食事環境の大部分をサポートする協力者です。目標や改善の進捗を共有し、協力してもらいましょう。
チームメイト: 共に改善に取り組む仲間がいることで、外食時や遠征時の食事選びでお互いに意識を高め合えます。
コーチ・トレーナー: 専門的なアドバイス、身体の変化のチェック、目標達成のためのトレーニングとの連携など、食事改善をパフォーマンス向上に結びつけるための指導を受けましょう。
周囲の理解とサポートは、時に心が折れそうになった時の大きな支えとなります。4. 小さなことから始める:「スモールスタート」で抵抗感をなくす
完璧を目指すあまり、最初から全てを変えようとすると挫折しやすくなります。まずは、無理なく続けられる小さな改善から始めましょう。
具体的な小さな一歩:
「毎日、朝食にタンパク質源(卵やヨーグルトなど)を1品追加する」
「練習後のプロテイン摂取を欠かさない」
「間食を、市販のお菓子からおにぎりや果物に変更する」
小さな成功体験を積み重ねることで、「自分にもできる」という自信が生まれ、次のステップへと繋がります。5. 楽しむ:食事をポジティブな体験に変える
食事は生きる喜びの一つです。「~を食べてはいけない」という制限ばかりに意識が向くと、食事の時間が苦痛になり、継続が難しくなります。
楽しむための工夫:
様々な食材や料理に挑戦し、自分好みの**「勝負飯」や「リカバリー飯」**を見つける。
旬の食材を取り入れ、季節感を楽しむ。
友人や家族と一緒に食事をし、コミュニケーションを楽しむ。
「栄養を摂っている」という意識を「身体を強くする喜び」へと変え、食事の時間をポジティブに捉え直しましょう。6. 柔軟性を持つ:「完璧主義」からの脱却
常に完璧な食事を追求することは現実的ではありません。時にはチームでの外食や、友人との間食を楽しむことも、精神的なバランスを保つ上で必要です。
柔軟な対応例:
「今日は外食だから、揚げ物は控えて魚料理を選ぶようにしよう」
「週末は好きなものを食べるけれど、週明けからはしっかり栄養バランスを戻そう」
「昨日は失敗したからもういいや」ではなく、「今日はリカバリーするぞ」という意識を持つことが大切です。食事改善は100点満点を目指すマラソンではなく、平均点を引き上げる努力です。焦らず、自分のペースで、柔軟に対応しながら、楽しみつつ継続していきましょう。習慣化には時間がかかりますが、その継続こそが、あなたのパフォーマンスを飛躍的に向上させる力となります。