一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 「感情移入」がもたらす価値についてのAI雑記

テーマ:「感情移入」がもたらす価値

感情移入(エンパシー・イマージョン)とは、視聴者が登場人物や状況に“自分を重ねる”心理状態。
情報が理解
から体験へと変換され、判断や行動に影響を与える起点になります。


なぜ重要か(価値・貢献度)

  • 注意の固定:他人事が“自分事”に変わると、離脱率が下がる。
  • 記憶の強化:感情を伴う出来事は、事実単体より長く残る。
  • 態度変容:好意・信頼・危機感などの“向き”を作り、意思決定を後押し。
  • 行動誘発:購入、共有、応募、寄付など“クリックの先”の行動確率が上がる。
  • ブランド資産化:共感体験はロゴより強い“物語の記憶”として蓄積。

どう生まれるか(メカニズムの要点)

  1. 視点の一致:POV(主人公の目線)・視線誘導・音の近接収録で“あなたの目線”を作る。
  2. 目標と障害:主人公の望みと壁が明確だと、観客は“応援”モードに入る。
  3. 具体と余白:固有名詞・質感の“具体”で解像度を上げ、解釈の“余白”でイマジネーションを膨らませる。
  4. 時間の設計:溜め→変化→余韻(静)が感情の波を支える。
  5. 反復の合図:色・形・音のイメージシステムで感情のスイッチを学習させる。

映像設計のコツ(3ステップ・30秒想定)

① 同一化の入口(0–5秒)

  • 主語は一人。顔より“手・背中・呼吸音”で距離を縮める。短い一語で動機提示。
    ② 追体験の流れ(5–22秒)
  • 目標→障害→選択の順。寄り→手→俯瞰の視点ジャンプで“自分がそこに居る感”。
    ③ 余韻の固定(22–30秒)
  • 変化点で一瞬の無音、ロングテイク1秒。メッセージは5〜7語以内。

目安KPI:視聴維持(中盤落ちの改善)、保存率・共有率、好意・理解度のアンケート上昇。


ビジネス貢献(ユースケース)

  • 商品PR:開発者/ユーザーの“ひとつの困りごと”に密着 → レビューやCTRより保存・共有が伸び、指名検索に効く。
  • 採用:新人の“初日”にフォーカス → 応募フォーム到達率が改善。
  • 社会・教育:当事者の一日を追う短編 → 行動喚起(寄付/参加)率が上がる。

使わない場合/使った場合(Before/After)

観点 感情移入なし 感情移入あり
主体 会社・機能が主語 人物の目的が主語
伝え方 列挙・仕様説明 体験・選択の連鎖
画づくり いつも俯瞰・定点 手元・息遣い→俯瞰の対比
印象 “分かるけど残らない” “分かるうえで思い出す”
行動 価格比較に流れる 指名・保存・共有に流れる

実装チェックリスト(そのまま使える)

  • 主人公は一人か/動機は7語以内か
  • 最初の5秒で“距離を詰める”ショットがあるか(手・背中・音)
  • 目標→障害→選択の因果が見えるか
  • 変化点の“無音0.3〜0.5秒”を入れたか
  • 色・形・音の合図(簡易イメージシステム)は反復されているか
  • メッセージは少語か(5〜7語)

注意点(倫理と品質)

  • 過剰演出の回避:悲哀の過度な煽りは信頼を損なう。
  • 多様性の担保:典型化しすぎた“理想像”は排他性を生む。
  • 検証:A/Bで“泣ける/刺さる”より保存・共有・検索の実データを評価軸に。

まとめ

感情移入は、情報を“体験”に置き換える変換装置
ダイナミズム(運ぶ力)と強度(刻む力)の土台に人への同一化をのせれば、短尺でも“見て終わり”を“思い出して動く”に変えられます。まずは主語を一人に、最初の5秒で距離を詰め、変化の直前に無音——これを実践することで、より強く「印象に残る」映像ができるかもしれません。

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