【自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)】
安倍総理が小泉政権下で官房長官を務めていた時から描いていた構想が、日本、アメリカ、オーストラリア、そしてインドを連帯させる、セキュリティ・ダイヤモンド構想であった。
第一次政権末期、インド国会で行った演説、「二つの海の交わり」は、その第一歩であった。
地政学的に、シー・パワーである日本やアメリカと、ランド・パワーであるロシアや中国は対立する宿命にあるが、インドは半シーパワー、半ランドパワーという独自の立ち位置にあった。
そのインドは、どちらかと言えばロシアや中国寄りの国であった。インドが核保有に成功した際、アメリカなどによる経済制裁に遭い、あまりいい感情を持っていない。インドが使用している戦闘機がスホーイやミグなどであることからも、それが窺える。
そのインドとアメリカの手を合わさせようというのだ。安倍総理でなければまとめられない構想であった。
インドのモディ首相は、アメリカとオーストラリアの構想だったら乗らないが、日本が主導するのであれば、賛同しようという考えであった。2018年、来日したモディ首相を別荘に招いた安倍総理は、2人だけでじっくり話す。
そこでモディ首相は、インドが半世紀以上に渡り貫いてきた非同盟主義という国家方針を大転換し、この構想に加わることを決意する。安倍総理は、最大の懸案であったインドを動かした。