一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

映像制作における「尺FIX」とは、カット割りとその秒数を確定させる作業です。 多くの人が「まだ編集の余地を残しておきたい」「後で調整できたほうが柔軟だ」と考えがちですが、実はその「未確定」こそが最大の毒になります。

なぜなら、映像制作はドミノ倒しのような構造をしているからです。


 

1. 後工程は「FIXした尺」を前提に動く

尺が決まらないと、その後に控えるプロフェッショナルたちが身動きを取れません。

音楽・MA(音響)

1秒のズレで、盛り上がりのタイミングや曲の終止形が台無しになります。

CG・VFX

1フレーム単位でコスト計算をする世界。尺が伸びれば予算が跳ね上がり、短くなれば作業時間が無駄になります。

ボイス収録

ゲーム制作における映像制作はFIXした尺から逆算してボイス・ナレーションが収録される流れが多いです。尺がFIXしていない状態で収録に臨み、ボイスが尺内に収まらない場合は、尺調整やボイス再収録が必要になり、作業量が膨大になります。

 

2. 「ずるずる」が招くスケジュールの逼迫

「とりあえず進めよう」と尺を曖昧にしたまま後工程に突入すると、必ずどこかで「やっぱり3秒伸ばしたい」という調整が発生します。 この「わずか3秒」が、MAのやり直し、CGのレンダリング再実行、さらには再チェックのループを生み、雪だるま式にスケジュールを圧迫していきます。

なぜ尺FIXを「怖がる」のか?

プロジェクトが進まない原因の多くは、決断への恐怖にあります。 「もっと良くできるかもしれない」というクリエイティブな欲求は大切ですが、プロの仕事におけるクオリティとは、「決められた制約(時間と予算)の中で最大出力を出すこと」です。

尺FIXの決断が遅いディレクターのいる現場はいつも「炎上」している印象です。

尺を固定することは、表現の幅を狭めることではありません。むしろ「ここから先は内容の密度を上げることに集中する」という攻めの姿勢への切り替えなのです。

 

スムーズな完パケへのロードマップ

プロジェクトを「炎上」させないためのシンプルなルールは、以下の3点に集約されます。

「仮」を卒業する勇気

オフライン編集(仮編集)の段階で、関係者全員が「これでいく」と握り合う。

合意形成の徹底

クライアントや上司に対し、「ここから先は1秒も動かせません」というデッドラインを明確に伝える。

逆算の思考

最終納期から逆算し、MAやCG作業に「安全なバッファ」を残すためには、いつまでに尺をFIXすべきかをスケジュール表に刻み込む。


 

結びに代えて

映像制作において、時間は単なる数字ではなく、作品を支える「骨格」そのものです。 「尺FIX」を丁寧に行うことは、後工程に関わるスタッフへの敬意であり、最終的なクオリティを守るための最大の防御策でもあります。

同じ経験を持つ方は、次回のプロジェクトでは編集の早い段階で「よし、これでいこう!」と力強く宣言してみてください。その一言が、チームを混乱から救い、最高のエンディングへと導くはずです。

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