「消費税はお客様が払っているんじゃないの?」
これはよく聞く言葉です。結論から言えば、負担しているのは消費者、納税義務があるのは事業者です。しかし、現場に立つとこの構図はそれほど単純ではありません。
消費税は、商品代金に上乗せされる形でお客様から預かり、事業者が国へ納めます。計算式はシンプルです。
預かった消費税 − 仕入れで支払った消費税 = 納税額
これが仕入税額控除の仕組みです。
理屈の上では、事業者は“預かっているだけ”の存在です。しかし実務では、必ずしもそうなっていません。
近年、原材料価格や物流費、人件費、燃料費は上昇を続けています。一方で、販売価格は簡単には上げられません。特に食品業界は価格競争が激しく、「税込価格ありき」で商談が進むことも多いのが実情です。
例えば、税込100円でしか売れない商品があるとします。本来、税抜100円で売りたい商品でも、市場が税込100円を求めるなら税抜価格は約91円になります。その差額分はどこにいくのか。結果的に事業者の利益が圧縮されます。
つまり、
法律上は消費者負担
経営上は転嫁できなければ事業者負担
という二重構造が生まれています。
食品卸売業は薄利多売のビジネスです。数%の粗利で成り立っている中で、価格転嫁が遅れたり抑えられたりすれば、影響は決して小さくありません。
さらに、税率変更や制度改正があれば、販売管理システムの修正、請求書区分の変更、取引先との価格再交渉など、多くの実務対応が発生します。単なる「税率の数字」以上に、現場には大きな負担がかかります。
消費税は本来、広く公平に負担を求める税制です。しかしその運用の中で、価格転嫁の力関係や市場環境によって、実際の負担感は大きく変わります。
私たち卸売業者にとって重要なのは、「誰が払っているか」という理屈だけでなく、持続可能な価格形成ができているかどうかです。事業者が健全に利益を確保できなければ、安定供給は維持できません。
消費税の議論はこれからも続くでしょう。だからこそ、制度の話だけでなく、流通現場の実態にも目を向ける必要があるのではないでしょうか。