最近、AIをどう使うかという話があちこちで聞かれるようになった。自分自身もプロダクト開発でAIを使い倒す中で、ずっと引っかかっていたことがある。「プロンプトを磨けば磨くほど、本当にスケールするのか?」という問いだ。この連載では、その問いへの自分なりの答えを整理していく。
AIをスケールさせる答えは、より良いプロンプトを書くことではない。チームの価値観とビジョンを構造的に整備し、AIが自律的に動ける土台を作ること——これが核心だ。人間であれAIであれ、自律的に動くには判断基準が必要だ。「何が正解か」「どこに価値があるか」がわからなければ、AIはとにかく実行し、とにかく結論を出す機械になる。目的が曖昧なまま使えば、無目的な実行や早計な答えが返ってくる。これはAIの性能の問題ではなく、判断基準が定義されていないことの問題だ。
「価値観をAIに与える」というと抽象的に聞こえるかもしれない。でも機械学習の基礎から見ると、これは非常に具体的な話だ。次回はその構造を掘り下げていく。
第1 回|機械学習から読み解く「価値観」の正体
前回、価値観がAIの自律に不可欠だという話をした。今回はその根拠を機械学習の仕組みから整理したい。難しい話ではなく「なぜ判断基準がないとAIは動かないのか」を別の角度でお届けする。
教師あり学習は正解ラベルがなければ何も学習できない。強化学習は報酬関数がなければ何も最適化できない。RLHFは人間の価値観そのものを報酬モデルとして組み込む。GANでさえ、GeneratorとDiscriminatorが創造的に対立できるのは、同じ価値関数を共有しているからだ。学習パラダイムが違っても「何を最適化するか」の定義なしには何も機能しない——これが共通している。
プロダクト開発においても同じ構造が成立する。価値観を定義すること=AIが最適化すべき目標を与えること。これがなければ、AIはとにかく実行し、とにかく結論を出す機械になる。次回はこの価値観がどのような構造でチームとAIを支えるのかを見ていく。