9月14日の自民党総裁選挙で、菅義偉官房長官が377票を獲得し、下馬評通りの圧勝を果たしました。その結果、菅義偉氏は9月16日に第99代内閣総理大臣に就任することになりました。
菅首相は次の6つの公約を掲げています。
(1)国難の新型コロナ危機を克服
(2)縦割り打破なくして日本再生なし
(3)雇用を確保 暮らしを守る
(4)活力ある地方を創る
(5)少子化に対処し安心の社会保障を
(6)国益を守る外交・危機管理
新型コロナへの対策は、まさに日本が直面する危機であるため、1番目に掲げるのは当然だと思います。そのため、菅内閣にとって、実質的に最も重視している公約が「縦割り打破なくして日本再生なし」ということになります。つまり行政改革に注力するということです。そしてこの行政改革の目玉となるのが、「デジタル庁」の創設です。行政の縦割り打破の一環として、菅首相は政府のデジタル化を進める必要があると考え、そのデジタル化を主導するためにデジタル庁の創設を主張しているのです。
政府のデジタル化は行政の効率化を進め、その効果は民間経済活動にも波及することが予想されます。また、省庁横断的にデジタル化を進めることで、省庁の地方移転もより容易になり、東京一極集中の是正にも貢献することになると考えられます。
具体的な政府のデジタル化とはマイナンバーカードの普及や行政手続きの際の押印の廃止が挙げられます。2020年9月時点のマイナンバーカード交付率はいまだに19.4%にとどまっています。政府はこれを2年半後までに100%にすることを目標としています。その目的は、あらゆる手続きをスマホやパソコンからできるようにすることです。例えば、新型コロナウイルス対策として10万円の定額給付金がありましたが、日本では多くの方が郵送で申請していました。その結果、申請から給付までに非常に時間がかかり、生活が苦しく一刻も早く給付金が欲しいと考えていた方々に、中々給付がされないという事態が発生しました。それに対して政府のデジタル化が進んでいる韓国では、多くの方がオンラインで各種給付の申請をし、翌日には入金が完了していました。また日本では引越手続きのために役所や警察署、郵便局など、様々な場所に足を運ぶ必要がありますが、政府のデジタル化が進んでいる国では自宅のパソコンで住所を入力するだけで完了します。
こうした問題を解消するために、政府のデジタル化を求める声が高まっています。また、将来の生産効率向上のためにもデジタル化は必須です。そしてデジタル化で注目されているのがデジタルトランスフォーメーション、略してDXです。
DXについては、経済産業省が以下の通り定義付けています。DXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」としています。つまり、ITを活用して生産効率を上げることです。そして経済産業省はこのままDXが進まなければ、2025年の崖を克服することはできないと警鐘を鳴らしています。
経済産業省によると2025年の崖とは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合に想定される国際競争への遅れや日本経済の停滞などを指す言葉です。2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了などによるリスクの高まりなどがこの停滞を引き起こすとされています。このためDXが進まない場合には、2025年〜30年の間に最大で12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされています。複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムを刷新しない、刷新できない企業は淘汰の波にさらされることになります。
DXを具体的に言うと、契約書といった紙の書類をPDFなどに切り替えていくペーパーレス化もその一つです。またオンライン会議の開催や、AIによる議事録作成などもDXの具体例です。
経済産業省と東京証券取引所は、DX銘柄としてデジタルフォーメーション35銘柄を挙げています。小松製作所や大和証券、住友商事、ブリジストンなどもDXが進んでいる企業として取り上げられています。詳細については、リンクを貼っておきますので、そちらでご確認ください。
経済産業省:DX35名柄とDX注目企業21銘柄
https://www.meti.go.jp/press/2020/08/20200825001/20200825001.html
今後の株式投資には、このように政府が主導するデジタル化に注目しても良いかと思います。