一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

第一部 勝戦之計 第四計 以逸待労

「以逸待労」
「いいつたいろう」と読みます。
「逸を以て労を待つ」
「いつをもってろうをまつ」と読みます。

今回は少し言葉の意味だけでは分かりにくいかもしれません。
「逸」は落ち着いている余裕がある状態、
「労」は動き回って疲れている状態を指します。
つまり「自分は余力を保ったまま疲れた相手を迎え撃つ」
という意味になります。

前々回の「囲魏救趙」で紹介した孫臏が、
ここでも活躍します。

魏を破ってから13年後、
魏は韓に大軍で攻め込みました。
韓から救援要請を受けた斉は、
前回と同じく魏の大梁へ進軍します。
しかし前回と同じ手は通用しないと考えた
魏の将軍・龐涓は韓の包囲を解き、
斉軍の後方へ回り込みました。
韓への攻撃自体が、斉軍を誘い出すための陽動だったのです。
それに気づいた斉軍は退却を開始します。

龐涓は「今度こそ孫臏を討つ」と意気込み、
勢いよく斉軍を追撃します。
途中、龐涓は斉軍の陣跡を見て、
かまどの数を確認します。
すると進むにつれて数が減っていることに気づきます。

「逃亡兵が増えているのではないか」

さらに追撃を続けると、
かまどの数はますます減っていきます。

「この程度なら、少数の兵でも追いつける」

そう判断した龐涓は速度を上げて追撃します。
やがて日が暮れかけた頃、
渓谷の中に立つ一本の木に文字が刻まれている、
という報告を受けます。

木の表面は削られており何かが書かれていましたが、
暗くてよく見えません。
そこで松明を持ってこさせ照らしてみると――

「龐涓、此の木下で死す」

その瞬間、龐涓は罠に気づきます。
しかしすでに遅く松明を目印に一斉に放たれた矢によって
魏軍は壊滅的な打撃を受け、龐涓も命を落としました。

この一連の流れは全て孫臏の計略でした。
相手を深く引き込み疲れさせ、
最も有利なタイミングで迎え撃つ――
まさに「以逸待労」です。

孫子の兵法にも深追いの危険性が説かれています。
追えば追うほど消耗し、
気づいたときには相手の土俵に引き込まれている。
その先に待っているのが、この「以逸待労」です。

孫臏は周到に準備し魏軍を自国の奥深くまで誘い込み、
疲弊したところを一気に叩きました。
待っている側と追い続ける側。
この差がそのまま勝敗を分けたのです。

ビジネスでのポイント:
無理に動き続けるのではなく余力を保った状態で主導権を握り、
疲弊した相手に対して最適なタイミングで仕掛けることが重要。

次回は 第一部 勝戦之計 第五計「趁火打劫」です。

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