前編からの続きです。
肺機能を強化するのには、ただ激しい運動をすればいいわけではなく、かといって軽度の運動を漫然と続けても効果がありません。心臓や呼吸器に適切な負荷をかけることが強化する最大のポイントとなりますが、実際にどれくらいの負荷を何を指標に掛ければいいのでしょうか?
いろいろな算定方法があるのですが、心拍数を指標として用いる方法が一番簡単で手頃に出来ますので御紹介しますね。
心拍数は一分間における心臓の収縮の回数の事です。不整脈がある場合は必ずしも一致しませんが、基本的に脈拍数=心拍数と考えてもらって大丈夫です。
脈拍数は血圧計はもちろん、最近ではスマートウォッチなどで簡単に計測出来ますし、シンプルに手首で1分間の脈拍を計るだけで算出できます。
心肺機能の鍛えるには①週に数回②一定時間以上の継続運動を③目的に応じた心拍数を保って行なう事で効果的に強化されます。それぞれについて説明していきます。
①週に何回運動すればよいか?
健康促進を目的にするなら週3~4回程度の運動が適切かと思われます。
週1~2回程度ですとそのたびに疲労して、運動効果も蓄積していきません。
もちろん何もしないよりましですが…
一方で毎日欠かさず運動すると疲労が蓄積し、筋肉が修復・再生する機会が失われるので週1~2日は休養日を設けたほうが良いです。
週3~4回の運動ですと、体力が付いてくるにつれ疲労しなくなり、運動効果も蓄積されていきます。
②どれくらいのどんな運動を続ければよいか?
最初の安静時の状態から運動を始めると、それとともに呼吸数と心拍数が上昇し、数分経つと心肺の働きも酸素の供給と需要のバランスも安定してきます。これを定常運動というのですが、この定常運動に入るのに10分程度必要です。定常運動に持ち込むのに10分、そこから定常運動を行ない、クールダウンを行ないながら終了するには全体として最低限20分~30分の運動が必要です。
運動の種類はランニングでも水泳でもエアロビクスのようなエクササイズ、さらには登山やハイキングなど、全身運動かつ持続運動であれば何でも構いません。
最初はウォーキングや散歩から始めてみるのも良いでしょう。
③どれくらいの運動強度で運動すればよいか?
年齢により最大の心拍数は決まっており、その何割程度の心拍数を保つかによって心肺機能は効果的に鍛えられます。そしてその割合はその人の体力や運動の目的によって異なります。
・運動初心者が運動不足解消のために始める場合 … 最大心拍数の40~50%
・ある程度慣れた人が脂肪燃焼・健康促進のために行なう場合 … 最大心拍数の60~70%
・アスリートがより専門的な身体能力を高めるために行なう場合 … 最大心拍数の70%以上
私たち一般人は最大心拍数の40%から運動を始めて70%の運動強度を目指せば良いという事になります。
また全身持久力(スタミナ)を推し量るもう一つの指標として最大酸素摂取量という数値があります。
これは酸素をどれだけ体内に取り込むことが出来るかを表す指標となるのですが、「最大酸素摂取量の50%の強度の運動を一日30分程度、一カ月続けると全身持久力が向上する」と言われており、この最大酸素摂取量50%の運動強度を心拍数で換算すると最大心拍数の55~60%の運動と合致するんですね。
こちらのサイトにてご自身の目標となる心拍数が分かるので運動負荷の指標にしてくださいね。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228740
心拍数を計るスマートウォッチは安いものは数千円で購入できます。やはり自分の身体の情報が客観的に分かると無理して身体を壊すこともないですし、運動も楽しくなりますから一つ購入してはいかがでしょうか?(ステマではないので、あすとらむには一銭も入りません。)
ちなみに健康な方の安静時心拍数は50~70回/分で、アスリートなど心肺機能が高い人ほど少なくなります。
安静時心拍数が80回/分以上の場合は体力低下や一時的な体調不良・疲労さらには何らかの病気が隠れている可能性もありますのでご注意ください。
心拍数の多い人ほど心臓や血管の病気の罹患リスクが高まります。
また、運動を始めるとその運動量と運動強度に伴って心拍数は上がり始め、年齢や体力に見合った上限まで達するとそれを保ち、運動を止めると速やかに心拍数も下がってきます。
しかし心臓が悪い人はもともとの安静時心拍数が高い上に、運動をしても心拍数が上がらなかったり、運動後にもなかなか心拍数が下がらない人がおられます。もし運動をやってこの傾向がみられたら、一度循環器系のお医者さんに相談してみてください。
心拍数を計って運動するというと、なんだか本格的なアスリートのトレーニングのようで一般的には必要ないように思われるかも知れません。しかしむしろ運動習慣のない人や身体の弱い人こそ、ご自身の状態を客観的に把握することで、無理なく効率よく運動できると思うのでぜひ試してみてくださいね!