ほんの小さな一言が裁判所の判断を左右する重要な材料となってしまう事件があったという
ことを知り、肝に銘じておかなければならないと考え投稿します。
お客さまとの会議などで発した「われわれが責任を持って対処します」という言葉が、後に
なって大きなの債務を背負うキッカケになったり、「よろしくお願いします」と言われて
反射的に「はあ…」と答えてしまったことが約束と見なされたりする、ということもあります。
今回の件はベンダーの自社Webサイトで発信した言葉が裁判所の判断の材料となったとのこと
です。その言葉が決定的な証拠とまではならなかったが、ベンダーの技術者やプロマネ、
あるいは営業担当者でさえも、さして重要視していなかったであろう言葉が、判決文の中に
明確に記される重要事項となってしまったようです。
この事件は、システム開発における「プロジェクト管理義務」の問題をはらんでいます。
ITの専門家であるベンダーは、素人であるお客さまのプロジェクトの関わりを管理する
義務があります。例えばお客さまがいつまでも要件を決めないのであれば、そのリスクを
説明して早く決めるように促し、また、当初予定していなかった要件の追加や変更があるなら、
それに対してスケジュールの見直しや追加費用の請求を行なうなどしてプロジェクトを円滑に
進める義務があります。
できるならできる、できないならできないとハッキリと伝え、代替策をユーザー企業と検討する
義務がITベンダーにはあります。これが「ITベンダーのプロジェクト管理義務」になります。
判決としては、ベンダーが「プロジェクト管理義務」を怠った、ということになっています。
こうなった理由がベンダーのWebサイトに記載されていた
「システム開発に当たって最も重要なのは、仕様が合っているか否かです。
仕様の相違はプログラミングミスより大きな欠陥です。弊社はお客さまから
とことんヒアリングし、とことん情報を拾い、文書に起こします。
お客さまはそのニーズを口頭でお話しいただくだけで資料準備は一切不要、
後は全てお任せいただいております」
という部分にあります。
上記記載を証拠して提示したのがお客さま側のようです。
単なる会社としての宣伝文句かもしれませんが、見る側はそういうことをしてくれるベンダー
として見ますし、期待もします。
ということは、どこに書かれているものであれ、企業が外部に向けて発信した文言は軽くない
ということになります。当然発信元は従業員に周知し、具体的にどのような行動をとるべきか、
プロジェクトにおいてどんなことをしなければならないのか、確認・徹底させることが必要に
なると思います。
今私の周囲を見ると、自社の看板を背負っていることを認識していない人が多いと感じています。
お客さま先で自社にいるような態度をとる姿は非常に残念です。
その会社の文化なのか、若いからなのか、上司の教育がまったく行き届いていないのか
わかりませんが、自分自身はさらに気を引き締めていこうと思います。
以上です。