一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • インフレ時代の到来 〜新築戸建て住宅価格の高騰〜
マンションの価格高騰が目立っていますが、一方で新築戸建て住宅の価格高騰も顕著になっています。その原因の一つが以前から言われている「ウッドショック」です。木材の不足は、新築戸建て住宅の工期にも影響を及ぼしているとのことです。
東京カンテイのデータを見ると、東京都の新築戸建ての平均価格は概ね5,000万円以上で推移しています。2022年5月の平均価格は5,240万円となっており、2年前と比較すると約1,000万円も高騰しています。東京以外のエリアについても、2年間で10%前後高騰しており、住宅戸建て価格は全般的に上昇トレンドとなっています。
戸建て価格の高騰の原因は、まずは低金利が挙げられます。特に最近は諸外国が金利を引き上げる中で、日本だけが低金利を続けており、その金利の低さが目立っています。依然として変動金利は0.3%台、固定金利でも1%強で住宅ローンを借りることができるというのは非常にお得な感じがします。またコロナ禍で在宅勤務者が増えたことで、マンションより広く、騒音を気にせずに過ごせる戸建て需要が上がったことも要因の一つとして挙げられます。
加えて大きな要因として挙げられるのが「ウッドショック」です。「ウッドショック」とは、世界的な木材不足から木材の価格が高騰し、一戸建ての不動産価格高騰や工期遅延が起きている現象を指します。確かに2021年2月を起点としてあらゆる木材の価格が高騰しています。ウッドショックの要因は、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとした世界的な住宅需要の増加や、コンテナの海上輸送運賃の上昇にあります。日本は木材自給率が約40%と低く、輸入木材に依存しており、世界的な木材価格の高騰の影響をモロに受けた格好になっています。木材のみならず、世界的に物流や住宅設備の生産が停滞したことも、日本の戸建住宅の価格高騰や工期遅延の要因となっています。コロナ禍で「トイレがない」と話題になったことも記憶に新しいところです。
さらに今年3月にはロシアが非友好国に対してチップ・丸太・単板の輸出を禁止することを決定しました。非友好国には日本をはじめ、アメリカやEU諸国など48の国と地域が含まれています。ロシアは世界全体の2割の森林を保有する森林大国であり、欧州など木材をロシアから供給に頼っている国も少なくありません。輸出が禁止された木材について、日本はロシアからの輸入に依存していることはありませんが、世界の木材不足を助長させるものには変わりありません。日本も間接的に影響を受けています。
食料やエネルギーにしても同様ですが、経済安保の観点からも今後は国産材への回帰が必要となると思います。国産材の安定供給推進への動きは、すでに見られています。林野庁は、木材不足と価格高騰への緊急対策として、2021年度、補正予算において木材乾燥施設の整備など国産材の安定供給に向けた措置を講じました。2022年度も、林業や木材加工・流通施設などへの支援措置を行います。勿論、国産材の安定供給は一朝一夕には成り立ちません。山林は現在荒れており、人手不足も深刻です。当面は輸入木材に依存している状況は続き、日本の住宅マーケットはウッドショックの影響を受け続けることになります。また世界的なインフラも継続することも考えられますし、住宅ローン金利についても不確定要素があります。
このようにあらゆる価格が不安定化する時代が到来しました。インフラに対応した資産運用が求められます。
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東葛 コンサルティング

投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務、PE(プライベート・エクイティ)業務に従事していました。 経済、投資等についてのアドバイスを行っています。

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