政府がいわゆる「ゼロゼロ融資」を今月末をもって打ち切ることを決定しました。
いわゆる「ゼロゼロ融資」は新型コロナ対策の一環として2020年3月からスタートしました。直近1ヶ月の売り上げが15〜20%減少した企業等に対して3年間実質無利子・無担保で運転資金などを貸し出す仕組みであり、保証料もゼロとなっていました。元本は最長5年間据え置きが可能で、零細企業や個人事業主は最大6,000万円、中小企業など最大で3億円まで借りることが可能となってしました。
新型コロナウイルス感染症が猛威をふるう中、業績が悪化する中小企業に対する支援制度として機能し、企業倒産件数を歴史的低水準に抑え込んできました。しかし、一方で元々資金繰りが厳しかった企業、ゾンビ企業を無理やり延命させている、といった批判も上がっていました。そうした延命装置がついに外されることになります。
いわゆる「ゼロゼロ融資」のスタート当初は、日本政策金融公庫等の政府系金融機関に限定されていましたが、2020年5月に民間金融機関にも開放されたことで、貸出額が一気に増加し、貸し出しバブルと言われる状態となりました。いわゆる「ゼロゼロ融資」は、各都道府県などの信用保証協会による保証がつくため、万が一焦げ付きが発生しても代位弁済を受けることが可能であり、加えて自治体からは通常よりも遥かに高い利率での利子補給まで受けることができるため、金融機関にとっては融資をためらる理由はありません。その結果、いわゆる「ゼロゼロ融資」は金融機関にとってはまさに「打ち出の小槌」といわれる制度となり、貸し出しバブルは当然に発生してしまったのです。こうして積み上がった融資総額は2022年3月末時点において、政府系金融機関で18兆円超となり、民間金融機関ではその倍の37兆円にまで膨れ上がることとなりました。その返済が今年から本格化しています。
国は今後は返済負担の軽減にまとを絞った中小企業支援策に切り替える方針です。複数の借入を一つにまとめて長期で返済する借り換え保証制度などの活用を促進して倒産抑制などにつなげる意向です。ただ、こうした国の対策がどの程度中小企業等への支援につながるかは未知数であり、現在の世界経済の状況を踏まえると、企業倒産ラッシュが発生してもおかしくないステージに突入したように感じます。