日本を「2025年の崖」へ引きずりこむ5つの課題
経済産業省のレポートでは、日本を「崖」へ引きずり込むITシステムおよび産業の課題を記載しています。ここでは、その内容を5点にまとめて整理します。
①経営戦略の不在でDXを進められない
レポートは、DXを活用したビジョンや経営戦略の欠如を問題視しています。もちろんDXの必要性に対する認識が高まっており、その調査や推進に向けた組織を立ち上げるような動きはあるものの、具体的な方向性を模索するにとどまっている企業が多いとの指摘をしています。
②既存のITシステムが老朽化・肥大化してDXを阻害
長い間稼働を続けるITシステムが日本企業には数多く存在します。稼働しているからよいというわけではなく、老朽化・肥大化が進行してDXの妨げとなってしまっています。
③DXを進められるIT人材の枯渇
DXを進めるには、最新のIT事情のみならず既存システムの仕様にも詳しい人材が求められます。しかしながら、そうしたIT人材を容易に育成・採用できるわけではありません。そもそも、多くの企業ではITシステムの開発や改修、保守・運用を外部のベンダー企業に業務委託という形で依存しているのが一般的です。そのため、社内にITシステムのノウハウが蓄積されず、自社でシステム再構築へ向けた動きを起こせなくなっています。
➃肥大化したシステムをめぐるユーザー企業・ベンダー企業の軋轢
「既存システムの保守・運用もベンダー企業に任せているのだから、DXへ向けたシステム刷新もまたベンダー企業へ任せればよい」と考える方がいるかもしれません。
しかし、そう簡単に外部企業へ任せてDXを実現できるわけではありません。ベンダー企業としても、失敗リスクを引き受けてまでDX推進に向けたシステム刷新を提案するのはなかなか難しいところがあります。既存システムの保守・運用であれば、売上の見通しも立てやすいのですが、リスクの大きいDX推進の収益性は不透明であり、改革型提案には慎重にならざるをえません。
⑤日本の情報サービス産業におけるビジネスモデルの陳腐化
以上の4点は、単なる一企業レベルを超えて、情報サービス産業の問題にもつながっています。情報サービス産業の既存のビジネスモデルは陳腐化していくため、これを転換させていく必要性が高まっているのです。
レポートによると、日本企業のIT関連費用の約80%は現行ビジネスの維持・運営に充てられています。これは、情報サービスを提供するベンダー企業の側からすると、システム開発や保守・運用の「受託事業が主なビジネスモデル」であることを示しています。
しかしながら、こうしたビジネスの規模は今後縮小に向かうとレポートでは予測しています。大型開発の一巡、企業統合等による情報資産の共有、クラウド化の進展などから、単に顧客が提示する仕様に合わせて開発を行うだけでは、競争力を早晩失っていく可能性があるとレポートでは指摘されています。