最近、一般の方の「投資」に対する意識が急激に変化しています。老後資金2,000万円問題が取り上げられ、自分自身の老後に対する不安を抱くようになり、投資で資金を増やそうとする方が増えているようです。国も資産所得倍増プランを掲げ、「NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の充実」、「預貯金を投資に誘導する新たな仕組みの創設」、「金融リテラシーの向上」、「年金額等の見える化」、「適切な助言・勧誘・説明を促す制度整備」といった方向性を打ち出すなど、貯蓄から投資への動きを加速させています。
一方で、最近頻繁に耳にするようになったのが「投資詐欺」です。「新しい暗号資産に投資することで確実に10倍になる」「元本は必ず保証する」といった、通常ではあり得ない利回りや元本保証をうたったものや、「友人や知人を紹介するとさらに報酬がアップする」といったマルチ商法のような案件も散見されるようになっています。特に最近は若者を中心にSNSが当たり前のコミュニケーションツールとして使われるようになっており、このSNSにより投資詐欺が拡散されてしまうことも多いようです。これまで投資は「怖いもの」、「胡散臭いもの」と近寄らなかった方々がなぜ簡単に騙されてしまうのでしょうか。こうした投資詐欺の被害に遭わないために、今回は代表的な投資詐欺の手法である「ポンジ・スキーム」について説明したいと思います。
ポンジ・スキームとは、アメリカで天才詐欺師といわれた、チャールズ・ポンジがその名の由来です。「出資を募り、運用益を配当金として支払う」と言って資金を集めるのですが、実際の運用をすることはなく、新しい出資者からの出資金を配当金として支払いながら、破綻することを前提にお金を騙し取る手法です。
【ポンジ・スキームの代表的な手口】
(1)高利回り運用で勧誘してくる
年利50%、毎月10%の利回りなど、通常では考えられない高利回りを提示してきます。年利数%程度では多額の出資金を集めることは困難であるため、現実離れした高い利回りを提示することが特徴です。
(2)毎月配当金を支払うと約束する
毎月数%の配当金を支払うと約束し、実際に最初はその通り高額配当が実行されます。そのため、最初は半信半疑であったものが、次第に本気で信じるようになり、より高額な投資をしてしまうことになります。
(3)少額での投資が可能となっています
このような高利回り運用の勧誘については、最初から信じている訳ではなく、大半の方は最初は半信半疑の状態です。そのため最初の投資金額の設定は数十万円からでも可能としています。その後、高利回り配当が実行されると、次第に信じるようになり、数百万円、数千万円といった巨額の投資を行うようになってしまうのです。
(4)紹介料が非常に高額に設定されている
ポンジ・スキームのポイントは、後に出資してくる方の出資金から、先に出資してくれた方への配当を払う点です。そのため次々に出資者を集める必要があります。そのため投資詐欺を行う詐欺師は、紹介者に紹介料を支払うことが多いです。そしてこれこそが、詐欺を拡大させる最大の要因となります。紹介する方は、本気で儲かる投資だと信じて友人や知人を紹介するので、被害者が拡大しやすくなるのです。本来は被害者でありながら、詐欺の片棒を担いだことになり加害者になってしまうのです。
(5)金銭貸借契約で投資を募る
本来、出資については投資信託契約を結ぶものであり、投資に関しては元本保証することは出資法により禁止されています。しかし、投資詐欺では、「金銭消費貸借契約を取り交わすと元本が保証される」と騙すことが散見されます。
【投資詐欺の見分け方】
投資詐欺の見分け方ですが、上記のような(1)異常な高利回り(現在であれば年利10%を超えるものは通常よりも高い利回りだと思います)、(2)元本保証、(3)高額な紹介報酬、のいずれか1つでも該当すれば、詐欺をうかがうべきだと思います。そもそも「月利10%」というのは、元本を3年後に10倍、5年後に50倍にする金利に相当します。ただ預けておくだけでこれほどまでにお金が増えるということはあり得ないでしょう。元本保証でこれだけお金が増えるのであれば、普通であれば誰にも教えずに自分で投資をするはずだと思います。また国内で金融商品の取引を行うには、金融商品取引法に基づく登録が必要となります。正規の業者を除いては、他の方に投資商品を斡旋すること自体が違法行為となるのです。投資詐欺には、悪意のないまま加害者側に回ってしまう危険性があるということも知っておいてください。