円安のプラスの効果は、まず企業収益の増加として現れます。今の日本ではそれが賃金に反映されず家計の増加につながらないのが事実です。実際にその恩恵を受けるには企業の株価上昇や配当増加を通じた資本所得の増加です。家計が株式や投資信託をかなりの比重で所有している場合には、重要なものとなります。USAの家計がそのよい例です。しかし、日本の家計の場合は、その金融資産の多くを現金や預金で所有しており、株式や投資信託で保有している割合は極めて小さいものにとどまっています。
円安のプラス効果を、家計の所得増をもたらすことによって成長と分配の好循環を生み出すことを期待したいのであれば、こうした所得分配のあり方、資産配分のあり方にも検討のメスを入れ、政策課題として取り組む必要があります。それがなされない限り、家計は、円安のプラス効果を実感できないまま取り残されてしまうことになってしまうでしょう。