一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 日本株、長期的な上昇の可能性を探る:新値更新とその意味

最近の日本株の動向に注目が集まっています。2024年初頭、日経平均株価は34年ぶりの高値を更新し、その後も4万円を突破するなど、顕著な上昇を遂げました。しかし、この急ピッチな上昇により、多くの投資家は懐疑的なスタンスとなっているのではないでしょうか。このような日本株への高所恐怖症に対し、今回の記事では長期的な視点から今後の日本株がどうなるのか、検証していきたいと思います。

1、上昇ペースの背景と今後の見通し

確かに日経平均株価の年初来上昇率は、記事を書いている段階で年率換算110%超となっており、この上昇率については持続可能性に疑問符が付きます。しかし、日本株はバブル期と異なり、過剰な割高感は見られません。東証株価指数(TOPIX)のバリュエーションを見ると、株価収益率(PER)16.5倍、株価純資産倍率(PBR)1.5倍(2024年3月11日現在)と、バブル期の高値とは大きく異なります。このため、価格が急落調整する価格調整が起こるのではなく、相場のもみ合いによる時間調整が見込まれる可能性が高いのではないかと考えています。

2、名目GDPと株価の関係

「実質GDPと日本株の上昇に乖離がある」との意見には注意が必要です。企業業績は名目GDPに連動する傾向にあり、2023年度の名目GDPは5.2%プラス、2024年度も2.2%の成長が見込まれています。物価上昇と賃上げの好循環が続けば、企業業績の好調さはさらに強まる可能性が高いと考えます。

3、賃上げ率の上昇と消費の活性化

2024年の春闘では賃上げ率の要求が30年ぶりの高水準に達し、大幅な賃上げの実現が予想されています。この賃上げが個人消費を活性化させることで、名目GDPや企業業績にプラスの影響を与える可能性が高いです。

4、「新値に逆らうな」:相場格言の意味

「新値に逆らうな」という相場格言には注意を払う必要があります。過去には、主要な新値が出現した際に強烈な買い相場が生じ、持たざるリスクが相場を押し上げるケースも見られました。例えば、2000年のナスダック指数や戦後の米国株の動きがそれを証明しています。今回もバブル崩壊から30年が経過し、日経平均株価はようやく新値をつけました。このような新値形成の動きには逆らうべきではないと考えます。

5、日経平均の「新値」とその暗示

34年ぶりの日経平均の新値更新は、日本株や日本経済に大きな意味を持ちます。以下の3つの構造変化が考えられます。

(1)デフレ脱却と日本の「普通化」

日本の株価指数は他国に比べて大きく上昇していませんが、これからは名目経済の拡大や賃金の上昇を伴う株式市場の長期的な右肩上がりが予想されます。デフレからの脱却が、日本を「普通の国」としての経済成長へと導く可能性があります。

(2)技術革新によるロールモデル化

AI、ロボット、自動運転などのテクノロジーの進化により、少子高齢化を抱える日本が世界の先例となる可能性があります。労働力不足に対するこれらの技術の活用は、新たな経済成長の源泉となるでしょう。

(3)米中対立とグレートシフト

米中対立や新冷戦構造によるグローバルな変動は、中国から日本への資本や人材のシフトをもたらすかもしれません。このような動きが日本経済や株式市場に新たな活力をもたらす要因になり得ます。

6、日本株投資の見通し

こうした構造的変化を背景に、日本株の将来性は明るいと言えるでしょう。安易な売りは回避し、長期的な視点で市場を見ることが重要です。日経平均の新値は、日本経済の新たなフェーズへの移行を予告しているかもしれません。投資家は、これらの変化を熟考し、自身の投資戦略を見直す必要があるでしょう。

7、まとめ

日本株の好調は単なる短期的な現象に留まらず、根深い経済的、社会的変化を反映している可能性があります。投資家は、急激な上昇に惑わされることなく、これらの変化を踏まえた長期的な視点からの投資を検討することが肝要です。デフレ脱却、技術革新、グローバルなシフトなど、日本株に関わるこれらの要因は、今後の投資の方向性を決定づける重要なポイントとなるでしょう。

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東葛 コンサルティング

投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務、PE(プライベート・エクイティ)業務に従事していました。 経済、投資等についてのアドバイスを行っています。

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