数カ月前から韓国国民の知れるところになった、大統領の地下党員疑惑により文在寅政権を覆い始めた暗雲は、地方からソウルに結集し出した高齢者を中心とする保守派みん州によって大きな危機に転換されました。ふだんは政治から離れ、キリスト教会(韓国総人口の4割がクリスチャン)や仏教寺院に日曜ごとに集っていた善男善女たちが牧師や僧侶のよびかけで首都にデモ、集会に出かけ、以来半年以上の長期にわたり大統領官邸(青瓦台)前の路上を占拠して泊まり込んで「北のスパイ、文在寅は大統領の座から降りよ!」と座り込んだのです。
文在寅の支持基盤で「ろうそくデモ・集会」を朴槿恵大統領弾劾以来、得意技としてきた左派労組運動も顔色を失いような保守派の大デモンストレーションが100〜200万規模で土日に開催されるようになり、それにつれ文在寅政権はさながら死に体のような状況に追い込まれていったのです。ソウルの街は、保守派の在郷軍人会も半ば武装して繰り出すなど、左右両派の間で一触即発の緊張状態が総選挙にいたるまで続いてきました。
しかし、追い詰められた文在寅政権にとって救いの風になったのが、中国武漢市発の新型コロナウィルス感染禍です。早々に韓国でも流行が始まり、死者が出始めるとソウル特別市長の朴元淳はここぞとばかり「防疫のためデモ集会は禁止」との布告を出し、反政権運動の指導者であるジョンカンフン牧師などデモ集会リーダーを警察機動隊動員の下に逮捕拘禁し、強行弾圧下で総選挙に突入しました。
選挙間も「コロナ感染とたたかう文在寅大統領」というキャンペーンを経営陣が労組活動家にすげ替えられたマスコミ各社から展開させ、海外でも「文在寅政権はアジア諸国の中で最も有効なコロナ感染抑止策を実施し成功させた」(これに追随している日本マスコミや盲信して喧伝している左派リベラル野党や評論家たちには呆れたものです)とのアナウンスを盛んに行って、韓国民にこれを「逆輸入」する巧妙な世論誘導作戦を繰り広げました。
結果として、文在寅陣営優勢で総選挙投票日を迎え、結果も左派の勝利となりました。しかし、韓国保守派は「コロナウィルス感染者数など政権側の隠蔽がある。選挙後、虚偽がバレて混乱がまた始まるだろう」と次のたたかいに備えています。
今後、韓国は統治基盤強化のための施策を選挙後に次々に打つであろう文在寅政権側と保守派との間でしのぎを削る争いが再燃するであろうことは、論を待ちません。