一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 運送業の2024年問題って…

そろそろ年末の繁忙期に入ります。ちょっと気が引き締まる思いです。

今年春に騒がれた【2024年問題】ですが、労働時間や残業時間が減る会社は多くあったようですが、運賃賃金の値上げはどのくらいあったのか?
ちょうど数日前にこんなニュースが上がっていました。

[現在、運送会社にとって運賃の値上げ交渉は避けられない状況だ。しかし、国交省の調査によると、運送会社のうち約13社に1社は、荷主への配慮から運賃交渉をためらっているという結果が出ている。
運賃交渉をためらう運送会社は確かに存在する。例えば、2020年に相談を受けたB社長の会社では、地方から関東方面への長距離輸送を行っていた。
運賃の値上げはしたいんです。でも、ウチの荷主は中小企業ばかりで、原油高でみんな経営が苦しくなっているなか、うちだけ運賃を値上げするのは、さすがにいい出しづらいんですよ」
とB社長は語った。おそらくB社長は優しすぎる人なのだろう。

「荷主さんたちを気遣うことも大切だと思います。でも、まずB社長が気遣うべきなのは、あなたの会社のドライバーや従業員ではないでしょうか?『荷主さんを気遣っているので、物価高でも君たちの給料は据え置きます』とか、さらに極論ですが『荷主さんを気遣っていたら会社が倒産しました』っていわれても、従業員は納得できないですよね」

 B社長に限らず、荷主の状況を考慮しすぎて運賃交渉を行わない運送会社は意外と多い。
国土交通省が2024年6月28日に発表した「『標準的運賃』に係る実態調査結果の公表」では、「71%」の運送会社が荷主に対して運賃交渉を行った一方で、残りの29%は交渉を行っていないという結果が出ている。運賃交渉を行わない理由として最も多かったのは「取引が切られることが怖い」(47%)で、次に多かったのは
「荷主の経営状況を考慮した」(27%)
という回答だ。つまり、運送会社が13社あれば、そのうち1社は荷主に気を使いすぎて運賃交渉を行っていないことになる。
 C社長が経営する運送会社で30年以上働いているドライバーのD氏は、最近になってC社長に対して強い不満を感じ始めたという。
この運送会社は、トラックを80台保有する中堅企業だ。物流業界外の人から見ると小さな会社に思えるかもしれないが、トラック保有台数が50台未満の運送会社が全体の93%を占める業界では、準大手にあたる。
D氏は、C社長が毎日のように荷主と接待をしていることを知っていた。荷主は特定の1社で、この運送会社の仕事の9割以上がその取引先に依存していた。
D氏は気さくなC社長を慕っており、C社長が誰よりも早く出勤する姿勢にも尊敬していた。しかし、たまに
「昨夜も呑みに行っててさ……ちょっと今朝はしんどいんだよね」
と弱音を吐くC社長に対して、D氏は「肝臓が弱っているんじゃないですか。接待もほどほどにしてくださいよ」とねぎらったこともあった。
この運送会社も物流の2024年問題の影響を受け、残業ができなくなり、ドライバーの収入も減少した。D氏は運賃の値上げ交渉がうまくいっていないのではないかと感じ、長年勤めているベテラン事務員と雑談していた際に、この疑問を口にしたところ、驚くべき答えが返ってきた。
「実はね……C社長は荷主さんと呑みに行くたびに、『ウチも経営が苦しいんだよ』と逆に説得されて、値上げ交渉を諦めているんだって」
さらに、ベテラン事務員も、相当腹に据えかねていたのだろう。接待費用はいつもC社長が支払っており、その金額が
「年間1000万円」
を超えていると教えてくれた。
「私も、社長の苦労は何となくわかっているつもりでした。だから『接待も仕事なんだな』と思っていましたが……自分は散々飲み食いした揚げ句、逆に荷主に丸め込まれて、私たち従業員のことをないがしろにするなんて……何のための接待なんですかね」
 人はひとりでは生きていけない。普通に生活していれば、多かれ少なかれ何らかの人間関係が生まれ、それにともなうしがらみも発生する。それは経営者にも当てはまる。
 B社長に筆者が伝えた通り、そしてD氏が不満に感じたように、
「荷主ではなく、まず従業員のことを考えるべきだ」
という意見は正論だろう。C社長の場合、人がよいことが裏目に出たのか、それとも単に気が弱く、交渉に向いていないだけなのか。それとも、従業員よりも荷主の気持ちを優先しているのか、そんな可能性も考えられる。
だが、先に行われた国土交通省の運賃交渉調査によると、13人にひとりの運送会社社長が運賃交渉を行わないとされており、そのような社長にあたったドライバーや従業員にとっては、非常に迷惑な話だろう。

 繰り返しになるが、運送会社が経営を健全化するには、運賃値上げ交渉を避けることはできない。そして、企業にとって社長は最大の権力を持ち、従業員が幸せになるかどうかは「社長の手腕」次第だ。もし、社長が荷主や地域社会とのしがらみに縛られて運賃交渉に消極的であれば、それは大きな問題だ。
ちなみに、本稿執筆にあたり、B社長と久しぶりに連絡を取った。荷主も苦しんでいるから、運賃交渉はしづらいといっていたB社長は、今ではこういっていた。
「今は、断られたら取引がなくなっても仕方ないという覚悟で運賃値上げ交渉を行い、結果も出ています。やはり、従業員のほうが大切ですから」

 しがらみという“呪縛”を乗り越え、社長としての優先順位を間違えないB社長のような経営者が増えることを、筆者は期待したい。]

私達個人事業主は勿論経営者に従うしかないし嫌なら他を探すしか無いんですが、できれば多くの経営者が立ち上がって状況を変えてほしい。それが全ての労働者にとっての願いです。

The following two tabs change content below.

井塚 宏

最新記事 by 井塚 宏 (全て見る)

この記事をシェアする

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • LINEでシェア