私は25年間ほど会社員をやっていました。
その中で、個人事業主とは会社の社長のことだと思っていました。
取引先にも多くいらっしゃいましたが、自分で会社をやっている人のことだと。
ですので、売る物も、資本金も、志もない自分には、無関係だと思っていました。
それが、今は個人事業主をやっています。
たしかに、どこにも雇われてはいません。
私は配送業なので、毎朝、荷物の集荷場に出勤します。
しかし、そこは自分が所属する会社ではありません。
そこでは、30人ほどの配達員が一斉に働きますが、同僚や先輩後輩ではなく同業者です。
彼らと世間話や情報共有はしますが、助言や助け合いはありません。
また、運行管理者がいて、集荷場の業務を回していますが、上司ではありません。
だから、我々に対して情報発信や注意をしますが、指導や教育はしません。
依頼もお願いの体裁が強くなります。
こういった労働環境、労働形態は初めてですが、驚くほど人間関係のストレスがありません。
私は25年間に4社で働きましたが、あり得なかったことです。
それは、人に揉まれるということがないからでしょう。
業務を請負い、遂行し、ギャラを得る。
顧客や会社との交渉も、立場による板挟みもありません。
同時に、成果に対するプレッシャーもありません。
しかし、その反面、仕事の高度化といった発展もありません。
また、仲間とお互いを高め合う成長もありません。
その意味では、仕事というより作業なのでしょう。
でも、その作業には、他人から感謝されるというおまけがつきます。
これは、毎日のシンプルなモチベーションとなります。
さらに、業務の請負先からは、堅い信頼を得ることができます。
今の、先の見えない不安定な社会の中で、この信頼は、とても強固なものに思えるのです。
もうひとつ、横の繋がりが違うことも新鮮です。
会社員のときは、取引先の担当者と親しくなっても、お互いに会社の立場での付き合いでした。
それが、今はフリーランス同士のお互いにメリットがあれば、すぐに協力関係になります。
顧客からの感謝、請負先からの信頼、そして、同業者との協力関係、
これらの「ダイレクト感」も、個人事業主の醍醐味かもしれませんね。