【TPPと日欧EPA❶】
そして未完に終わった第三の矢、成長戦略である。
この成長戦略は、TPPや日欧EPAが重要な柱となる。
TPPは当初、日本の農業に大打撃を与えると考えられて、農協が頑強に抵抗していた。それまでの日本の交渉力を考えたら、どうせまたアメリカの要求に屈するのだろうという前提で見られていた。
しかし、安倍総理の強いリーダーシップと、交渉担当の甘利明氏は、部類のタフな交渉をする。日米首脳会談の時、オバマ大統領が安倍総理に、「おたくのアマリは、タフネゴシエーターらしいね」と囁いたというから、その名が轟いていたのだろう。
日本の農業を最大限守りながら、日本は後から交渉に加わったにも関わらず、有利に話を進めていく。2016年、ドナルド・トランプが大統領になると、TPP交渉から離脱してしまう。
これは大きな意味を持つ。最大の経済大国が抜けてしまったというだけではない。それは、TPPの持つ多くの側面を理解していると見えてくる。TPPは、貿易協定としての経済戦略的側面、自由主義国による対中包囲網としての国際戦略的側面、経済安全保障的側面、食糧安全保障的側面などがある。
中国が経済を武器化するようになり、経済安全保障という概念が認知されるようになってきていた。