一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 安倍晋三は何を残したのか〜世界の真ん中で咲き誇る日本〜27

【TPPと日欧EPA❷】

中国による経済の武器化については、日本も攻撃を受けたことがあった。先に述べた、2010年の中国漁船衝突事件の時である。

漁船の船長を捕らえた日本に対して中国は、レアアース輸出の全面ストップを通告してきたのだ。レアアースを製品の糧とするハイテク製造業を中心に、我が国の産業界、そして経済産業省は大きな衝撃を受ける。

当時、中国のレアアース産出量は、全世界の97%に上り、その3割以上が日本向けであった。

日本はレアアースを原料とする製品で世界的なシェアと最先端の技術を誇っていた。その製品は、マレーシアや中国へ再輸出され、日本企業に莫大な利益をもたらし、パソコンなどのハードディスクに必須の高性能磁石は、ほぼ全量を日本で生産していた。

いかに日本にとって、大きな衝撃であったかが分かるだろう。いざとなれば、このように中国は攻撃をしかけてくる。経済安全保障は、喫緊の課題であったのだ。

TPPはまさに、対中包囲網という要素をもっていたのだ。そこにアメリカがいないというのは、致命的に思われた。

安倍総理は、逡巡する。どうしたものか、と。この時、高市早苗氏が進言する。「アメリカ抜きのTPPイレブンにすればいいじゃないですか。これはチャンスです。経済規模を考えたら、日本がTPPのリーダーになれますよ」

安倍総理は日米関係を重視していたため、高市氏としばらく目も合わせないほど不快感を持ったようだが、結局この考えを受け入れる。

こうして、世界のGDPの13%を占める新たな自由主義経済圏が日本主導で誕生する。

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