【TPPと日欧EPA❸】
さらに、安倍総理はTPPの条件を下書きする形で、日欧EPA(経済連携協定)を5年越しの交渉の末、2019年に発効させる。
EPAとは、従来のFTA(自由貿易協定)に加えて、投資規制撤廃、知的財産保護、人的交流などの共通ルールを定めることで、一つのブロック経済圏を作る仕組みのことである。いわば経済的な同盟のようなもので、FTAよりも加盟国同士の結びつきは深くなる。この結果、日本はEUからの輸入にかける関税の94%を撤廃し、EU側は99%を撤廃することなった。
安倍総理は、TPPと共に日欧EPAを締結することで、対中包囲網の新たな経済圏を創出したのだ。中国は、巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げて中国の覇権を拡大しようとしていた。これに対して、日本が中心となってさらに大きな枠組みを構築した。
これが、アベノミクス第三の矢、成長戦略の柱となるTPPと日欧EPAである。
この時の安倍総理を、オーストラリアのターンブル首相は、米TIME誌において、以下のように評している。
「世の中には強いリーダー、幅をきかせる指導者が少なくない中、辛抱強さ、勇敢さにかけて、安倍氏ほどの人はいない。TPPの未来は米国の撤退を受けて、一時絶望的に見えた。そのとき安倍氏は、他の諸国と力を合わせ、TPPの蘇生を目指したのである。安倍氏の資質が最もよく発揮されたときだった。安倍氏はぶれなかった。安倍晋三氏率いる日本は、オーストラリアにとって、それ以前にも増して親密な信頼のおける戦略的パートナーとなった。私自身も、彼の友情と懸命なアドバイスを大いに大切に思っている」