日本国内のブランディングコンサルティング市場規模: 日本のコンサルティング市場全体は近年急成長しており、2022年度には約1兆8,281億円(約1.8兆円)に達しました 。2017年度(9,644億円)から約5年間で市場規模はほぼ倍増しており、年平均成長率(CAGR)は+13.6%に上ります 。ブランディング分野はこのコンサル市場の一部としてマーケティング戦略やブランド戦略支援を担い、市場拡大に寄与しています。特にデジタル時代に入り中小企業にもブランディング需要が広がったことで、ブランド戦略コンサル市場も近年「数十億ドル規模」に達するまで成長しています (※グローバル市場の動向も含む)。日本のコンサルティング市場規模推移(2017–2022年度)。2017年に9,644億円だった市場は2022年に1兆8,281億円に拡大しており、年平均成長率は約13.6%と急成長を示した 。ブランディング領域もデジタル化や企業のブランド重視の高まりに伴い、この成長の一翼を担っている。
主要なブランディングコンサルティング会社の売上高と市場シェア: コンサルティング業界全体ではアクセンチュア、デロイト、PwCなどのグローバルファームが大きな存在感を示しています。世界市場における戦略コンサル分野のシェアでは、アクセンチュアが約9.78%、デロイトが7.51%、PwCが6.03%とトップ3を占めています 。日本市場でも、これら総合系ファームやEYストラテジー・アンド・コンサルティング(売上高約983億円 )などが主要プレーヤーです。一方、ブランディング領域に特化したコンサル会社としては、電通コンサルティング(電通グループ)やブランディングテクノロジーなどが知られ、広告・マーケティングの知見を活かしたブランド戦略支援を行っています 。総合系ファームもブランド戦略コンサルをサービスの一環として提供しており、たとえばデロイトやIBMはテクノロジーとマーケティングの統合支援で強みを発揮しています 。このように、大手総合コンサルと専門ブランディング会社が市場を二分し、それぞれの強みで市場シェアを競っています。
業界の成長率とトレンド: 日本のコンサル市場は、2020年に一時成長が足踏みしたものの 、その後はDX(デジタルトランスフォーメーション)需要などを背景に力強く回復・拡大しました。2021年度は前年比+24%の成長、2022年度も+16%増と高い伸びを示しています 。ブランディングコンサルティングにおいてもデータ分析やAIの活用が進み、消費者インサイトに基づく高度なブランド戦略提案が求められる傾向です 。近年注目されるトレンドとして、生成AIを活用したマーケティング、サステナビリティ(ESG)を意識したブランド構築、顧客体験(CX)重視のエクスペリエンスマーケティング、そしてD2Cモデルの普及などが挙げられます 。またAIやデータ分析、カーボンニュートラル対応などに対応できるコンサル企業が競争力を高めており 、ブランドコンサル領域でも環境・社会に配慮したブランディング戦略の提案が増えています。こうしたトレンドにより、業界は従来の広告・マーケ分野からさらに踏み込んだ統合的コンサルティングサービスへと進化しています。
主要企業の事例や成功事例: 日本企業でもブランディングコンサルティングを活用して成功したケースが多数あります。例えばクレジットカード大手のJCBは、自社ブランド価値向上のためコンサルの支援を受け、2007年にブランドメッセージを「うれしいを、しっかり。」から「世界にひとつ。あなたにひとつ。」へ刷新しました 。これにより「日本初・唯一の国際カードブランド」という独自ポジションを再認識させ、市場での存在感強化に成功しています 。また、航空大手の日本航空(JAL)は2010年の経営破綻からの再建過程でコンサルタントと共にインナーブランディング(社内ブランディング)に取り組みました 。各部署代表者によるワークショップ形式のセミナーを導入し、社員の当事者意識を醸成した結果、企業理念の浸透と社員の主体性向上に繋がり、ブランド再生の土台を築いています 。そのほか老舗企業の千疋屋のリブランディングや、大学(駒澤大学)のブランド戦略刷新など、業界・業種を問わずブランディング成功事例が報告されています 。これらの事例は、専門コンサルの知見を活用することでブランド価値向上や事業再生に寄与した好例と言えます。
今後の市場予測: 日本のブランディングコンサルティング市場を含むコンサル業界は、今後成長ペースの緩やかな成熟期に向かうとの見方があります。最新予測によれば、日本のコンサル市場規模は2030年度に約2.1兆円程度に達すると試算されています(2022年度比で約1.13倍) 。これは年平均成長率にすると数%台と、過去数年の二桁成長に比べ落ち着いたペースになります。ただし経済環境によってはポジティブシナリオで2.2兆円超(約19%成長)、逆にネガティブシナリオでは1.9兆円弱(数%の成長)という幅も想定されています 。いずれの場合も2兆円規模の大台は維持・突破する見込みであり、市場としては引き続き拡大基調です。また、グローバルで見ればブランドコンサル市場は2020年代後半まで年率10%前後の成長が予測されており 、日本企業も海外展開やDX推進に伴いブランド戦略需要が高まる可能性があります。今後は人材不足への対応やサービス多様化が課題となる一方で、企業のデジタルシフト・ブランド価値重視の流れを受けてブランディングコンサルの役割は一層重要になると考えられます 。以上より、国内ブランディングコンサル市場は堅調な成長を続けつつ、時代のニーズに合わせた進化が求められるでしょう。