一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • いちごの季節の終わりに思う

 

ハウスの中の甘い香りが薄れてきた。もうすぐ、今年のいちごシーズンが終わる。毎年この時期になると、寂しさと達成感が入り混じった複雑な気持ちになる。

 

12月から5月まで、朝も夜もないような日々だった。温度管理に神経を尖らせ、受粉のタイミングを見計らい、一粒一粒に愛情を込めて育ててきた。特に今年は記録的な寒波に見舞われ、何度もハウスの保温に徹夜した日があった。それでも、お客様から「美味しかったよ」と声をかけていただいた時は、すべての苦労が報われた。

 

最後の収穫を前に、ハウスを一巡する。もう実をつけていない株も多いが、来シーズンに向けてランナーが伸び始めている。いちご農家にとって、季節の終わりは次の始まりでもある。6月からは苗づくりに力を入れ、夏越しの準備に追われる日々が始まる。

 

「また来年、もっと甘いいちごを作ろう」

最後のパックに貼るシールに、そう書きながら、私はそっとハウスの扉を閉めた。一年間、本当にお疲れ様、と声をかけるように。

The following two tabs change content below.

江俣 利治

この記事をシェアする

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • LINEでシェア