一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • わたしの仕事・10月

10月のハイヤードライバーの仕事には、秋の深まりとともに増してくる「品格」と「季節感」があり、毎日の運行が実に楽しく、やりがいにあふれています。空は高く澄みわたり、朝夕の空気が心地よくなってくるこの季節、街も人々の装いも落ち着きを増し、私たちのサービスにも、より一層の丁寧さと気品が求められます。

この時期はビジネスシーンが非常に活発になり、企業の会議、視察、接待などの送迎依頼が多くなります。特に10月は、企業にとっては年度後半の本格始動のタイミング。大切なお客様を乗せる場面も増え、ハイヤーの役割は単なる移動手段ではなく、企業の信頼を背負った“移動する応接室”としての役割を果たす必要があります。車内の清掃や温度管理、音楽の選定、言葉遣いひとつに至るまで、細やかな気配りを積み重ねることで、「またお願いしたい」と思っていただける信頼関係を築くことができるのです。

観光においても、10月は紅葉シーズンの始まりとして人気の高い月です。京都や箱根、日光などへの送迎も多くなり、国内外からの観光客をお乗せすることも珍しくありません。車窓から見える秋の景色に目を輝かせるお客様の姿を見て、「この瞬間を一緒に味わえる喜び」を感じるとき、この仕事の奥深さと尊さを実感します。

秋は冠婚葬祭の季節でもあり、格式ある場への送迎も多くなります。礼節をわきまえた所作と、時間の正確さが強く求められる中で、プロとしての技術と精神が試されます。緊張感のある現場で、時間どおりに、お客様の気持ちを乱すことなくお送りできたときには、何ものにも代えがたい達成感を覚えます。

10月の空気にはどこか静けさと凛とした美しさがあり、その中を滑るように走るハイヤーの運転席で、私はこの仕事の素晴らしさを日々噛みしめています。日ごとに変わる空と風の匂い、街の彩り、そしてお客様の笑顔や感謝の言葉。それらすべてが、この仕事を続けていて良かったと心から思わせてくれるのです。

10月は、丁寧に、しっかりと、一つひとつの運行を積み重ねていく月。目立つことはなくとも、誰かの大切な時間と体験を支える存在として、私は今日もハンドルを握ります。この季節だからこそ味わえる仕事の醍醐味が、ここには確かにあります。

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増澤 直也

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