英語にある程度自信があっても、実際のビジネスの現場では、その自信が揺らぐ場面に頻繁に直面します。特に会議や打ち合わせなどの口頭でのコミュニケーションにおいては、相手の話すスピードが速く、内容が聞き取れなかったり、正確に伝えられなかったりすることが少なくありません。
英語が「通じるかどうか」だけであれば、シンプルな表現でもある程度は対応できます。しかし、ビジネスの場面では、丁寧さや正確さ、そして細かなニュアンスの違いが、信頼関係やプロジェクトの進行に直接影響することも多く、単に「伝われば良い」という考えだけでは限界を感じることもあります。
受験英語の場合、明確なゴールが設定されており、参考書や問題集も体系立てて用意されています。文法事項、語彙リスト、長文読解など、それぞれの分野で習得すべき内容が決まっており、勉強の進め方に迷うことはあまりありません。
しかし、ビジネス英語にはそのような「正解」や「カリキュラム」が存在しないことが多く、何から手をつければ良いのか戸惑ってしまうことがあります。特に、「読み書き」はある程度できるのに「聞く話す」がままならない、というギャップは多くの学習者が感じている部分ではないでしょうか。
また、ビジネスシーンで使用される表現や専門用語には業界ごとの特徴もあり、汎用的な学習だけではカバーしきれないこともあります。そのため、ビジネス英語の学習には「目的に応じた取捨選択」が求められますが、その判断自体が難しいという現実もあります。
近年、私自身が強く感じているのは、発音と音声に関するルールの重要性です。英単語の綴りと発音は必ずしも一致しておらず、見た目で推測できない音が多く存在します。そのため、「知っている単語なのに聞き取れない」「自分が発音した単語が相手に伝わらない」といった問題が発生します。
特に以下のような音声変化のルールは、英語を聞き取るうえでも話すうえでも非常に重要です。
リエゾン(音の連結)
たとえば “pick it up” は「ピッ・キット・アップ」ではなく、「ピキラップ」のように発音されます。語と語が自然に繋がることで、実際の音声は大きく変化します。
リダクション(音の省略)
“want to” が「ワナ」、“going to” が「ガナ」など、弱く発音されたり、一部が省略されたりする現象です。
フラッピング(舌打ち音化)
アメリカ英語特有の現象で、“butter” が「バター」ではなく「バラー」のように聞こえるのがこれにあたります。
口外音と口内音の使い分け
英語の発音では、唇・歯・舌などの使い方に明確な違いがあります。たとえば「th」音(/θ/や/ð/)は、日本語に存在しない口外音であり、舌先を歯の間に軽く当てて発音します。これができていないと、”think” が “sink” に、”this” が “dis” に聞こえてしまうこともあります。
これらの音声変化や音のルールは、日本の学校教育ではほとんど触れられないため、自分で意識して学ぶ必要があります。聞き取れない原因が「語彙不足」ではなく「音の変化による認識ミス」であることに気づいてから、発音練習やシャドーイングを重視するようになりました。
英語の学習には、教材費、レッスン料、時間など、さまざまなリソースが必要ですが、現在の日本において、英語学習に割くリソースは十分に回収できる「投資」だと考えています。特にビジネスにおいて英語を使う機会を手に入れた場合、その投資がもたらす成果は非常に大きいと感じています。
発音やリスニング力を高め、チームメンバーとのちょっとしたやり取りがスムーズになるだけでも、仕事のストレスが軽減され、パフォーマンスにも良い影響が出てくることがあります。今後は、発音トレーニングや会話の瞬発力を鍛える学習にも、積極的に時間とお金をかけていく予定です。
英語はあくまで手段ではありますが、その手段がより洗練されていれば、伝えられること、理解できること、築ける信頼関係は確実に広がっていきます。
迷いながらも一歩ずつ、自分なりの方法で学びを積み重ねていこうと思います。