一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • Springにおける通常のセッション管理とJWTベース認証の比較

Webアプリケーションにおいて、ユーザー認証後のセッション管理は重要なセキュリティ要素である。Spring Frameworkでは、従来型のHTTPセッション管理と、近年主流となってきたJWT(JSON Web Token)ベースのステートレスな認証方式の両方を実装可能である。本稿では、それぞれの方式の仕組みと特徴、利点・欠点を対比し、ユースケースに応じた選定指針を提示する。

 

1. 通常のセッション管理(ステートフル)

 

Spring Securityの標準的なセッション管理では、ユーザーがログインすると、認証情報がサーバー側のメモリもしくは分散セッションストア(例:Redis)に保存される。このセッションには一意のセッションIDが付与され、クライアントはそのIDをクッキーに格納して次回リクエスト時に送信する。

 

サーバーは受け取ったセッションIDをもとに、保存されているセッション情報を復元し、認証を通す。これにより、セッションの失効(ログアウト)やタイムアウト制御が容易である一方、サーバーは全セッションの状態を保持しなければならず、スケーラビリティに制約が出る。

 

メリット:

 

セッション失効が即座に反映される。

 

ユーザー状態を柔軟に管理可能(例:途中で権限変更など)。

 

 

デメリット:

 

サーバー側にセッション情報の保持が必要(ステートフル)。

 

スケールアウト時にセッション共有またはSticky Sessionが必要。

 

 

2. JWTを用いたセッション管理(ステートレス)

 

JWTベースのセッション管理は、認証後にサーバーが署名済みトークン(JWT)を生成し、それをクライアントに返却する。クライアントはこのトークンをAuthorizationヘッダに乗せて以降のリクエストを行う。サーバー側ではトークンの署名を検証することで認証状態を判断し、セッション情報を保持しない。

 

この方式はREST APIなどにおいてスケーラビリティが高く、マイクロサービスアーキテクチャと親和性が高い。ただし、JWTは発行後の状態変更が困難であり、有効期限を過ぎるまでは原則として無効化できない。これにより、トークンの取り消しや即時ログアウトは実装の工夫が必要となる。

 

メリット:

 

サーバーは状態を持たずスケーラビリティに優れる。

 

クラスタ構成やマイクロサービス間での認証が容易。

 

 

デメリット:

 

トークンの無効化が困難(ブラックリスト運用や短命トークン+リフレッシュトークンが必要)。

 

トークンがクライアントに露出するため、漏洩時の影響が大きい。

 

 

3. 選定のポイント

 

観点 セッション管理 JWT

 

状態管理 サーバー側で保持 クライアント側のみ

スケーラビリティ 低〜中(Redis等で改善) 高

即時失効 容易 困難

構成のシンプルさ 単体構成では簡便 トークン管理が必要

セキュリティ サーバー内で完結 トークンの保護が重要

 

 

小規模アプリケーションや即時失効が求められるシステムではセッション管理が適している。一方、スケールアウトを見据えたアーキテクチャやSPA/モバイル連携を意識する場合にはJWTが有効である。実装負荷やセキュリティリスクを加味し、要件に応じた選定が求められる。

 

 

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