人を雇うのは、事業を前に進めるための大きな決断です。
しかし、それが必ずしもプラスになるとは限らない――この数か月で、私はその現実を痛感しました。
採用したのは、配送や清掃をこなせる人材。
最初はルームクリーニングを任せました。ですが、作業中の事故や、何度教えても覚えられない作業手順に頭を抱える日々が続きました。
「このままじゃお互いに良くない」
そう思い、業務を変えてみることにしました。
次は配送を担当してもらいました。
しかし、状況はさらに厳しくなります。
自動車事故を起こす。
指示通りに安いガソリンスタンドへ行かず、高い燃料を入れる。
約束や指示を守らない――。
正直、この時点で心の中では限界が見えていました。
そんなある日、一本の連絡が入りました。
以前ルームクリーニングをご依頼いただいた大切なお客様から、従業員あてに「今忙しいですか?」と。
私はその時忙しくなかったので、「今度挨拶に行くと伝えて」と頼みました。
しかし、その返答は――
「もうこの仕事はやっていません」
……その瞬間、お客様との関係は完全に途切れました。
長年かけて築いた信頼が、わずか一言で崩れ落ちたのです。
電話を切った後、胸の中には怒りよりも深い虚しさが残りました。
この出来事が決定打となり、私は雇用契約を解除することを決めました。
ただ、すぐに関係をゼロにはせず、「従業員ではなく業務委託として関わる形」をこちらから提案。
勤務時間や作業方法の縛りをなくし、成果物単位での契約に切り替えました。
従業員の一言で、事業主の信用は一瞬で失われる
業務を変えても改善しないケースはある
契約形態を見直すことは、事業を守るための大切な手段
今回の経験は苦いものでしたが、「誰と、どう関わるか」を考えるきっかけにもなりました。