一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • eBay DDP発送のリアルなコストとリスク

初めてのSpeedPAK DDP発送の記録

今日、初めてSpeedPAKを使い、アメリカ向け荷物をセラーが関税や手数料を負担する「DDP(関税セラー負担)」で発送しました。
今回のケースは以下の通りです。

  • 商品代:189ドル(約28,000円)

  • 送料:22ドル(約3,000円)

  • バイヤー支払総額:211ドル(約31,000円)

梱包後の総重量は150gの小さな商品で、送料自体は1,933円でしたが、それ以外に以下の手数料が発生しました。

  • 米国輸入手続き手数料:296円

  • 米国関税および税金:4,722円

  • 燃料割増金:583円

  • 米国関税処理手数料:99円

送料を含めた合計金額は7,693円です。

以前はeLogiを利用しており、送料は約2,800円でした。今回はバイヤーから約3,200円を送料分として受け取っていますが、差額として約4,500円を自腹で負担した計算になります。

商品代と送料の合計31,000円に対して、関税・税金などの負担は約5,760円、割合にして18〜19%です。
つまり、今後eBayで販売価格を設定する際は、約20%分を上乗せして計算しないと利益率が下がる可能性があります。


SpeedPAKの関税対応変更

2025年8月29日から、アメリカで通関されるすべての商品に一律15%の関税と各種手数料が課せられるようになりました。これに伴い、eBayのSpeedPAKでは2,500ドル以下の荷物は、バイヤーが関税や追加手数料を強制的に支払うシステムへ変更されています。


DDP(関税セラー負担)の現実

DDPは、バイヤーが関税でトラブルを起こすリスクが低く、取引がスムーズに進むというメリットがあります。しかし、返品時にはセラーが支払った関税や手数料が基本的に返金されないという大きな問題があります。

理論上はDuty Drawback(関税還付制度)が存在しますが、eBayのDDPではFedExやDHLが「Importer of Record(輸入者名義)」となるため、セラーが直接還付を受けることはほぼ不可能です。返品が発生した場合、セラーは関税・その他の税金・往復送料、さらに再輸入時に日本側で発生する可能性がある関税まで負担しなければなりません。日本側の関税は税関の判断によって免除される場合もありますが、必ずしも免除されるとは限らないため、利用する運送業者への確認が必要です。

高額商品を扱う場合、この負担が大きなリスクになることもあります。そのため、SpeedPAKの利用を避け、別の配送業者でDDU(関税バイヤー負担)を選ぶセラーが増えているようです。


DDU(関税バイヤー負担)のリスク

DDUはセラー側の負担が軽くなる反面、バイヤーが関税の支払いを拒否して荷物を受け取らないリスクがあります。その場合、返送料や関税、さらには日本側で発生する可能性がある関税までセラーが負担することになり、結果的に赤字になることも珍しくありません。

取引前に「関税が約20%かかります」と説明し、了承を得てから発送する方法もありますが、すべてのバイヤーが納得するとは限りません。たとえ了承を得て発送しても、受け取り時の追加請求を嫌がり、関税の支払いをためらうバイヤーが出てくる可能性があります。


eBay輸出DDU(関税バイヤー負担)発送の落とし穴|返品時に発生する高額コストとリスク」

以前、イスラエル向けに商品を発送した際、商品代と送料を合わせて約16,000円の注文だったにもかかわらず、FedExから約6,000円の関税請求があり、バイヤーが支払いを拒否したことがありました。結果として、FedExからは「現地で廃棄する」か「日本へ返送する」かの二択を迫られました。廃棄費用が非常に高額だったため返送を選びましたが、返送料3,000円、関税6,000円、日本側の関税4,500円、合計13,500円を負担することになったのです。

幸い、eBayのルールで「バイヤーが関税を理由に受け取りを拒否した場合、返金義務はない」と定められているため、16,000円の商品代金はそのまま確保できました。しかし、発送時の送料3,000円と返送にかかった13,500円のコストを合わせると、最終的には約1,500円の赤字となりました。返品された商品を再販して結果的に利益を回収できたものの、返品が発生した際のリスクの大きさを痛感した出来事でした。

この経験から痛感したのは、DDPだけでなくDDUでも、バイヤーが関税の支払いを拒否すれば最終的な負担はすべてセラーに降りかかるという現実です。現在X(旧Twitter)でも、DDP発送で返品が発生した場合、支払った関税や手数料が一切戻らないうえ、返送コストまでセラーが負担する重いリスクが話題になっています。

事前に「関税が発生します」と説明し、了承を得て発送したとしても、受け取り時に請求された金額が高額だと感じたバイヤーが支払いを拒否するケースは少なくありません。DDUであっても、関税を拒否されればセラーがすべての費用を負担しなければならないのです。

このようなリスクを正しく理解したうえで、DDPを選ぶのか、DDUを選ぶのかを慎重に判断することが何より重要です。


DDP(関税セラー負担)推奨の背景とセラーの見方

X(旧Twitter)では、「SpeedPAKのDDP推奨は実質的な“eBay手数料の値上げ”ではないか」という声が多く見られます。

eBayが公式にDDPを推奨する理由として挙げているのは、関税未払いによる廃棄や返送を防ぐこと、そしてDDUでは通関に時間がかかり、配送が遅くなることの2点です。

多くのセラーは、この仕組みを「eBayが利益を増やすための構造」だと指摘しています。関税分を商品価格に上乗せさせ、その総額にまで手数料を課すことで、結果的にeBayの利益だけが増える仕組みになっているという見方です。本来、関税はバイヤーが負担すべき税金であり、セラーの売上とは無関係なものです。しかし、関税を含んだ価格に手数料がかかる現状は、セラーにとって大きな負担となっています。

ヨーロッパ市場では、バイヤーが約20%の関税を支払うのが一般的で、セラーが負担する必要はありません。ところがeBayは、「関税の支払いはバイヤーの義務」と掲げながらも、アメリカ市場ではセラーが関税を負担する形を推奨し、商品価格に関税分を上乗せするよう促しています。この対応は、eBay自身のポリシーと矛盾していると言わざるを得ません。

ただ、SpeedPAKがDDPを採用した背景についても考える必要があります。今回の急激な関税率の変化は、SpeedPAKやeLogi、そして私たちセラーにとっても前例のない状況です。そのため、関税によるトラブルを未然に防ぐ狙いがあったのかもしれません。とはいえ、この判断が正しかったのかどうかは、今後の運用を通じて明らかになっていくでしょう。いずれにしても、セラーは冷静に状況を見極め、2,500ドル以下の荷物をSpeedPAK(DDPのみ)で送るのか、他の配送業者を利用してDDUを選ぶのか、慎重に判断する必要があります。


これからの対応と心構え

日本国内でも物価が上がり続けている今、今回の関税の影響は日本のセラーにとって大きな打撃となっています。しかし、関税そのものは私たちがコントロールできるものではありません。

だからこそ、私たちができる対策を着実に進めることが重要です。たとえば:

  • 商品価格の見直し:関税や手数料を踏まえた価格設定を行う

  • 販路拡大:eBayMagなどを活用して多国籍出品を進める

  • 商品ページの改善:見栄えや説明を工夫して購入率を高める

私は「ピンチはチャンス」という言葉が好きです。厳しい状況だからこそ、新しい方法を模索する良い機会でもあります。今は大変かもしれませんが、試行錯誤を繰り返しながら、必ず突破口を見つけていきましょう。

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希望の轍

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