今月は個人的に契約している台湾の事務所から、とある台北市のマンションのファサード=立面のデザインを協力してほしいとの依頼があった。
立面のデザイン自体はまだ台湾の事務所側も手をつけていないのでほぼ初期デザインのイメージ提案を要求された。彼らはこれまで何棟もの高層集合住宅の設計の経験があり、こういったプロジェクトの進め方を熟知している。私が以前所属していた日本の設計事務所のやり方とはかなり異なる。
台湾のプロジェクトの場合は、とにもかくにも各部屋の広さ(坪数)と間取りが最重要視され、台湾の事務所もまず平面計画を決め、早い段階でほぼフィックスし、クライアントの同意を得る。そこからファサードを考え始めるので、実際立面の設計をする場合には設計の自由度がかなり狭められている=やれることが少ない。
日本の場合だと、平面と立面はほぼ同時並行で設計をすすめていく、つまり平面を考えながら、それが建物の表面にどういった影響を与えるのか、総合的に検討し、全体のボリュームを考えながら細部の平面にフィードバックしていく作業を繰り返し、設計していくのが普通であると思う。
一方台湾の場合は先に書いたように、平面と立面の設計進度が分離されている。つまり平面を先に決定→それを積み上げて全体のボリュームが決まる。決まった全体のボリュームに適した服を着せるように立面部分のデザインを考える。まるでそれは立面デザインを単なる建物の化粧のような扱いとしているような印象を受ける。やれることが制限されているので、少し装飾的な要素を外壁に取り付けたり、装飾的な要素で立面部分にいろんなパターンをつけたり、図像的な扱いに終始してしまうのが難点である。
現にすでに完成している多くの台湾の集合住宅などを見ても、こういった表面上のパターンだけで立面のデザインを競っているような印象のものが多く見られる。ひとまずこちらとしてはできる限りの可能性を考慮しながら、数パターンのデザインの方向性を示したのだが、どういった評価を受けるのだろうか?今後の展開は楽しみでもありながら、日本とは違う進め方に困惑もしている。