個人事業主にとって、「家族や友人との時間」と「仕事への取り組み」のバランスは永遠のテーマと言えます。ある人にとっては家族や友人との時間が最も大切であり、ある人にとっては仕事そのものが生きがいや楽しみである場合もあります。
仕事を「生活のための義務」と捉えるなら、旅行や家族との時間に仕事を持ち込むことは避けるべきだと考える人が多いでしょう。しかし、仕事が「趣味や自己実現に近い楽しみ」である場合は事情が異なります。
旅行中に読書やゲームに没頭する人が受け入れられる一方で、同じ「没頭」が仕事の場合には否定的に見られることがあります。つまり、「仕事」という言葉が持つ社会的イメージが、人間関係の摩擦を生む一因になっているのです。
先日、友人と旅行に出かけたときのことです。
ちょうど仕事が立て込んでいる時期で、移動中やホテルでもパソコンを開いて作業をしていました。私にとっては「責任を果たすためにどうしても対応しなければならない」という感覚でしたが、友人からすると「せっかく一緒に来たのに、集中してくれない」と映ったようです。結果的にけんかになり、友人は途中で帰ってしまいました。
この出来事は、「責任感から仕事を優先すること」が必ずしも周囲に理解されるわけではない、ということを痛感させられる経験でした。
また、周りの経営仲間から同じような体験談を聞いていたにも関わらず、防ぐことができなかったことに気が付き、これがあまりにも難しい永遠の課題であることを実感しました。
もうひとつの要素は、相手との関係性やそれぞれの価値観です。
・「一緒にいる時間を共有すること」を大切にする相手にとっては、仕事を優先する行為は軽視されたと感じる可能性があります。
・一方で「相手が好きなことに打ち込む姿」を尊重する関係性、また価値観であれば、同じ行動も理解されやすいでしょう。
つまり、どちらが正しいかは行為そのものよりも「相手との信頼関係や価値」によって評価が変わります。
「家族と仕事、どちらを優先するべきか」という問いに、普遍的な答えはありません。大切なのは、自分の価値観を明確にしつつ、相手の価値観との折り合いをどうつけるかです。
仕事に全力投球することが必ずしも悪いわけではなく、家族や友人を優先することが必ずしも正しいわけでもありません。状況や関係性によって正解は変わる。だからこそ、このテーマは「難しい」と言わざるを得ないのです。