一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • ベビーシッターにおける病児、病後児保育

はじめに

子どもが体調を崩したとき、保護者の方々が最も頭を悩ませるのは「誰が子どもを見守るのか」という問題です。共働き家庭や単身赴任の家庭、近隣に頼れる親族がいない世帯にとって、病児・病後児の預け先を確保することは非常に大きな課題です。日本では行政による「病児・病後児保育事業」が整備されていますが、定員や受け入れ条件に制限があるため、利用が難しいこともしばしばです。そこで近年注目されているのが、ベビーシッターによる病児・病後児対応サービスです。本稿では、シッターによる病児保育の制度的位置づけ、利用の流れ、メリットと課題について専門的な視点から解説します。

1. 病児・病後児保育の制度的背景
1-1 行政による病児・病後児保育事業
厚生労働省の指針に基づき、市区町村が実施している「病児・病後児保育事業」は、子どもが病気中または回復期で集団生活が難しい場合に、一時的に保育を提供するものです。医療機関併設型、病後児専用施設型、保育園併設型などの形態があります。対象年齢は概ね生後6か月から小学校6年生までで、医師の診断書や利用申請書が必要な場合も多く、急な利用には対応しにくい現状があります。
1-2 ベビーシッターによる位置づけ
一方、民間のベビーシッターが提供する病児・病後児保育は、法的には「認可外保育サービス」の一種とされます。つまり行政の制度内で提供される「病児・病後児保育事業」とは区別されますが、家庭内で個別に対応できる点が大きな特徴です。厚労省はガイドラインにおいて、ベビーシッター事業者に対しても「安全確保」「衛生管理」「保護者との契約内容明示」などを求めています。

2. ベビーシッターによる病児・病後児保育の仕組み
2-1 利用条件
病児シッターの利用にあたっては、各事業者やシッターによって対応範囲が異なります。一般的には以下の条件が定められています。
医師の診断により自宅安静が必要であること
感染症の種類によっては受け入れ不可(例:麻疹、水痘、インフルエンザの発症直後など)
37.5℃以上の発熱があっても対応可能かどうかは事業者により異なる
2-2 契約と事前面談
病児対応を希望する場合、事前に「病児対応可」と明示されているシッターと契約を結ぶ必要があります。通常のベビーシッター契約と異なり、
医療機関の受診有無の確認
緊急連絡体制(保護者・医療機関)
投薬補助に関する取り決め(医師の指示書が必要な場合もある)
などが追加で取り決められます。

2-3 当日の流れ
保護者が依頼
シッターが到着後、症状や服薬状況を確認
医師受診の同伴や看護的ケア(安静・水分補給・体温測定)を実施
経過を報告(LINEやアプリでのリアルタイム報告を導入している事業者も多い)
このように、病児シッターは「家庭内で子どもを個別に見守る」点で制度型病児保育施設と大きく異なります。

3. メリットと課題
3-1 メリット
家庭での個別対応:子どもが慣れた環境で安心して過ごせる
柔軟な対応:施設が満員でもシッターが見つかれば利用できる
突発的依頼に対応:当日朝の依頼にも対応可能なケースがある
3-2 課題
費用負担:病児対応は通常料金よりも割高(時給+病児加算が一般的)
シッター確保の難しさ:専門研修を受けたシッターが限られており、需要と供給のバランスに課題
リスク管理:症状急変時の対応(救急搬送や医療機関連携)がシッター個人に大きく依存する
4. 利用を検討する保護者へのアドバイス
事前登録を必ず行う
 急な体調不良に備え、事前に病児対応可能なシッターと契約しておくことが重要です。
利用範囲を確認する
 「どの感染症なら対応可能か」「発熱の基準は何度か」を事前に把握しましょう。
緊急時の連絡体制を共有する
 かかりつけ医、保護者、シッター間の連携方法を明確にしておくと安心です。

5. 行政との連携と今後の展望
国は2020年以降、ベビーシッター利用支援制度(内閣府ベビーシッター券など)を通じて費用負担軽減を図っています。ただし病児対応に直接使えるかどうかは事業者次第であり、利用者が制度をよく確認する必要があります。将来的には、病児・病後児保育施設とシッターとの連携や、自治体補助を活用した在宅型病児シッターの普及が期待されます。

おわりに
病児・病後児保育は、保護者の就労継続や子どもの安心した療養生活を支える重要な社会資源です。行政による施設型の病児保育と併せて、ベビーシッターによる在宅型の病児保育が存在することを知ることは、保護者にとって大きな安心につながります。制度的な仕組みや利用条件を理解し、家庭に合った選択肢を持っておくことが、子育てと仕事の両立を支える第一歩となるでしょう。

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