11月、すぎなみ協働プラザで全3回のAI講座を担当した。(11月で2回実施)
参加してくれたのは、地域で活動するNPOや自治会、市民団体の皆さん。年齢層も幅広く、特に60代以上の方が多かった。AIに触れてみたいけれど、どこから始めればいいのか分からない。そんな、少し不安と期待が混ざった空気が、初回の会場をやわらかく包んでいた。
2回の講座を通して強く感じたのは、多くの人が知りたいのはAIの専門知識ではなく、AIとの付き合い方だということ。
初回では、難しい仕組みの話よりも先に、AIはあくまで道具であり、自分が何を良くしたいのかが出発点になる、という話を丁寧に伝えた。目的がぼんやりしたままAIを触ると、どのボタンを押していいのか分からない。けれど、自分の中に小さな目的が一つあれば、使い方は自然と見えてくる。
参加者の皆さんが特にうなずいていたのは、AIは問いがないと動かないという話だった。
地域活動は、判断すること、意味づけることの連続だ。チラシの言葉をどうするか、誰に伝えるか、どんな形が喜ばれるか。そこには、その人が積み重ねてきた経験がちゃんと息づいている。AIはその経験の代わりにはならないし、置き換える必要もない。ただ、考えるための下地をつくったり、整理したりするのがとても得意だ。
2回目の講座では、NotebookLMというツールを紹介した。
自分の資料やPDFを読み込んで、要点をまとめたり、質問に答えたりしてくれる学びの相棒のような存在だ。実際に使ってみた方からは、これなら負担が減る、読み込む量が多い時に助かる、という声が多く聞こえた。
地域の活動を支えている皆さんは、イベントの企画書、会議のメモ、過去の資料の引き継ぎなど、表には出ない情報整理の作業をたくさん抱えている。NotebookLMは、そうした見えない負荷をふっと軽くしてくれる。
大切に積み重ねてきた知恵や工夫が、次の人にちゃんと届くように。情報が散らばらず、未来に残るように。そんな使い方ができるAIだと思う。
講座では、ステルスAIというテーマにも触れた。
これは、職場や学校でこっそりAIを使う人が増えているという話だ。サボっているわけではなく、求められる作業のスピードや正確さに追いつくための工夫でもある。資料作成や文章の整理など、AIに任せたほうが確実に早い領域はすでにたくさんある。だから、使うか使わないかで悩むより、どう使えば活動が楽になるのかを考えるほうが健全だ。
ただし、丸投げすればいいわけではない。
大事なのは、AIに任せる部分、自分が判断する部分、自分の経験が活きる部分。その3つの線引きをゆっくり見つけていくことだ。ここができると、AIは一気に味方になる。
2回の講座を終えて、改めて思った。
AIは、地域活動を続けていくための心強い道具になれる。体力的に難しくなった部分を助けてくれたり、誰かが担当できない時に、情報やノウハウを残す形で支えてくれたりする。何より、これまで地域の中心に立ってきた人たちの経験を、次の世代につなぐ力がある。
AIの役割は、効率化だけではない。
余白をつくることだと思う。
その余白で、もっと話せる。もっと相談できる。もっと丁寧に関われる。
人にしかできないことに、きちんと時間を使えるようにするための道具。
12月の最終回では、参加者の皆さんが自分で作ったアウトプットを持ち寄り、お互いに見せ合う予定だ。どんなアイデアや工夫が生まれてくるのか、とても楽しみだ。
AIは難しいものでも、特別な人の道具でもない。
ちょっとしたコツと、小さな目的があれば、活動の負担を軽くし、未来にバトンを渡すための心強い味方になってくれる。今回の講座が、その最初の一歩になっていたら嬉しい。