一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 「再生型観光の次の論点:外資が見る“日本のポテンシャル”と、地域が抱えるリアルな壁」

🔍 1. 外資が日本を“再生対象”として見る理由

前回は、世界と日本で広がる再生型観光の潮流を整理した。
続編では、なぜ外資が「日本こそ再生型投資のフロンティアだ」と捉えるのか、その背景をさらに深く探る。

世界の投資家の視点で見ると、日本には次のような特徴がある。

  • 観光資源は世界トップクラスなのに活用度が低い
     → 伸び代が極めて大きい

  • 地域ごとに独自性の強い文化・自然が点在
     → 再生型投資と相性が良い

  • インバウンド需要が構造的に強い
     → 長期的な投資回収が見込みやすい

  • 人口減少による「空き資源」が増えている
     → 再生・転用の余地が非常に大きい

外資投資家は、日本を「成熟マーケット」ではなく、
“未完の再生フィールド” と見ている。

その視点こそ、今後の日本の観光投資を語る上で不可欠だ。


🧩 2. 日本の観光地が抱える“構造課題”

再生投資が普及するうえで、日本の地方観光地は独自の「壁」も抱えている。

● (1) インフラはあるのに、地域間連携が弱い

空港・港・道路などハードは整っているにも関わらず、
地域同士の連携(DMO)が弱く、点で終わってしまう

「自然」「文化」「食」をつなぐ“ストーリー”が欠けているケースが多い。

● (2) 人材流出と季節雇用の問題

若年人口の流出に加え、
観光は「季節労働」になりやすい構造問題がある。

これは再生型観光の“長期視点”と相性が悪い。

● (3) 地主・行政・事業者のステークホルダーが多すぎる

再生型開発には、

  • 環境NPO

  • 行政

  • 地主

  • 宿泊事業者

  • 投資家

  • 住民

など、多様な利害関係者が関与する。

日本の場合、合意形成に時間がかかりすぎる点が投資家の悩みとなる。

しかし、ここにこそ外資が参入する余地がある。
外資は“第三者”として調整役になりやすい からだ。


💡 3. 外資が日本の地域再生に持ち込む3つの強み

① 資金と投資回収モデルの設計力

再生型観光は、初期投資が跳ね上がりやすい。

外資はお金を出すだけではなく、

  • 長期投資

  • 完成後の運営改善

  • ESGレポーティング

  • サステナブルブランド構築

まで、一連の流れを“事業として成立させる力”を持っている。

② グローバル基準のサステナブル運営

脱炭素、自然保全、人権配慮など、
国際基準のオペレーションを導入できる。

これは日本の事業者が最も苦手とする領域であり、
参入によって地域全体のクオリティが底上げされる。

③ 世界中の旅行者のデータとマーケティング力

再生型リゾートは「物語」が重要。
外資ブランドは、世界の富裕層旅行者を惹きつけるストーリーテリングを熟知している。

  • 海外での広報

  • ダイナミックプライシング

  • デジタルマーケティング

  • ブランドコラボレーション

これらは日本の地方が最も弱い部分だ。

外資が入ることで、市場アクセスが劇的に広がる。


🧭 4. ローカル側に求められる“覚悟”とは何か

再生型観光は、ハードの整備よりも“思想の転換”が重要である。

地域側が外資と協働するうえで、次の3つが不可欠になる。

① 「外資=買収者」という誤解を捨てること

外資は地域を“搾取する存在”ではなく、
“地域の未来を共につくるパートナー” になりうる。

② 地域外の知恵を受け入れる柔軟性

再生型観光は、従来の観光運営では成立しない。

  • 新しい価格設定

  • 新しい雇用の形

  • 新しい収益モデル

  • 新しい体験プログラム

これらを柔軟に受け入れる姿勢が重要だ。

③ 「短期収益」よりも「長期価値」を優先する文化

地域住民・行政・事業者の間で、
**“10年後を見据える意思決定”**が不可欠。

これができるかどうかで、地域の未来は大きく変わる。


🌱 5. 成功事例が示す「再生のレシピ」

世界の成功事例を見ると、共通する“公式”が浮かび上がる。

成功する再生型リゾートの公式

  1. 地域資源の本質を洗い出す

  2. 外資の資金・ノウハウを戦略的に導入する

  3. ローカルの誇りを保ちつつ、世界基準で磨き直す

  4. 環境だけでなく、文化・食・暮らしを再生の対象にする

  5. 持続ではなく、成長と循環を設計する(Regenerative Model)

この「公式」を、日本のどの地域にも応用できるかどうかが鍵となる。


🔮 6. 結語:日本の観光地は“リジェネラティブ2.0”へ進めるか

再生型観光は、単なる観光開発のトレンドではなく、
地域社会の再生モデルそのものである。

そして外資はその“触媒”になりうる存在だ。

次のステージは、
「外資 × 日本の地域」双方が対等なパートナーとして未来をつくれるか
にかかっている。

もしそれが実現すれば、日本の観光地は単に復活するだけでなく、
**“世界の再生型観光の模範”**へと進化する可能性を秘めている。

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