1. 背景と定義
「年収の壁」とは、パート・アルバイト従業員が税金や社会保険料の発生を避けるため、意図的に労働時間を抑制する現象を指します。深刻な人手不足の中、この就労調整が労働供給を阻害する要因となっており、制度の見直しが進められています。
2. 税制上の壁(103万円)の議論
所得税が発生する「103万円の壁」については、基礎控除等の引き上げにより非課税枠を拡大(例:178万円)する議論が行われています。手取りを増やし労働時間を延長させる狙いがある一方、国および地方自治体の大幅な税収減が懸念されており、代替財源の確保が課題です。
3. 社会保険の壁(106万円・130万円)の議論
社会保険加入により手取りが減る「106万円・130万円の壁」については、壁そのものを撤廃し、全ての短時間労働者を社会保険に加入させる方向で調整されています。現在は一時的な対策として「支援強化パッケージ(企業への助成金等)」が実施されていますが、将来的には週の労働時間要件等のみを残し、年収要件をなくす方針です。これにより将来の年金受給額は増えますが、直近の手取り減少と企業の保険料負担増が障壁となります。
4. 結論と課題
年収の壁撤廃は、労働力確保と社会保障の公平性・持続可能性の観点から不可欠な流れです。しかし、制度変更に伴う中小企業の負担能力、税収減への対応、そして労働者の手取り確保をどう両立させるかが最大の論点となります。