一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • トレーナーは何を見ている?“痛み”ではなく“原因”を見る視点

「どこが痛いですか?」
これはトレーナーが現場で必ず行う質問のひとつですが、実は本当に知りたいのは“痛い場所”そのものではありません。私たちが見ているのは、その痛みが**「なぜ起きたのか」**という背景です。

まず重要になるのが、痛みの発生状況を正確に把握することです。いつ、どの動作で、どのタイミングで痛みが出たのか。例えば「走っていて痛くなった」という情報だけでは不十分で、「加速時なのか、減速時なのか」「接触があったのか」「繰り返しの動作の中で出てきたのか」まで掘り下げていきます。これによって、外傷なのか、使いすぎによる障害なのかといった大まかな方向性が見えてきます。

次に行うのが、痛みの種類を細かく整理することです。鋭い痛みなのか、鈍い痛みなのか、動かしたときだけ出るのか、安静時にもあるのか。医学的にも、痛みは「侵害受容性疼痛(組織の損傷による痛み)」や「神経障害性疼痛」などに分類され、それぞれで考えるべき原因や対応が変わります。つまり「痛い」という一言の中には、いくつものヒントが隠れているのです。

そしてトレーナーの思考で特徴的なのが、対策までセットで考えなければならない点です。例えば膝の痛みひとつとっても、筋力不足、柔軟性の低下、フォームの乱れ、疲労の蓄積など、複数の可能性が考えられます。その中から「これが原因だろう」と直感で決めるのではなく、それぞれに対して「本当にそうか?」と反証を立てながら絞り込んでいきます。このプロセスを省くと、対処が的外れになり、結果として再発を繰り返すことにもつながります。

痛みに対して対策まで考えるうえで大切なのが、痛みのある部位だけを見ないことです。

体はすべてつながっており、一か所の問題が別の場所に影響を及ぼすことは珍しくありません。例えば、股関節の動きが悪いことで足部に負担がかかる、足首の硬さが原因で腰にストレスがかかる、といったケースは現場でもよく見られます。そのため、局所だけでなく体全体、さらには動作そのものを観察することが欠かせません。

こうして見ていくと、スポーツ現場で働くトレーナーの本質は、痛みの背景にある原因を見つけ、同じことを繰り返さない状態を作ることにあります。

痛みはあくまで結果です。そのサインをどう読み取るかで、その後の体の状態は大きく変わります。もしご自身の体に痛みを感じたときは、「どこが痛いか」だけでなく、「なぜ今、この痛みが出ているのか」と一歩踏み込んで考えてみてください。その視点が、体を守る大きなヒントになります。

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