一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • ナスダック、S&P500ともにベアマーケット突入!
これまで何度も取り上げてきた世界的なインフレ懸念。こうしたインフレ懸念に対応するために世界各国の中央銀行では金融引き締め策を進めていますが、このような金融引き締めが世界各国の経済を景気後退に陥らせるとの懸念を受け、現在幅広い資産クラスから資金が流出しています。EPFRグローバルのデータを引用したバンク・オブ・アメリカのレポートによると、18日までの1週間に株式ファンドからは52億ドルが流出したとのこと。特に投資信託の解約が目立ったようです。また債券ファンドからは123億ドルが流出。MMFや金からも資金が流出しています。世界の株式市場の時価総額は3月のピークから約12兆ドルが消失しています。
資金流出の結果、様々な市場がベアマーケットに突入することになってしまいました。ナスダック総合指数は既に3月7日時点で、2021年11月19日の高値から20.09%下落し、ベアマーケット入りしていますが、S&P500についてもとうとう1月につけた高値から20%強下落し、ベアマーケット入りしてしまいました。ベアマーケットとは、悲観論が広範囲に広がり、多くの投資家心理が冷え込む中、株価が20%以上下落した状態のことを指します。
今回は先にベアマーケット入りしたナスダック総合指数について見てみましょう。1971年にナスダック総合指数が生まれてから今回で13回目のベアマーケット入りとなります。過去のデータから見てみると、ナスダック総合指数が52週の高値からベアマーケットに到達するまでの期間は平均102日(中央値は76日)となっています。今回は2021年11月19日から2022年3月7日まで108日かかっており、これまでの平均102日より6日長く、過去の中央値である76日より32日長くかかって起きています。そしてベアマーケット入りをすればこれで終わりではなく、大半のケースではそれからもさらに下落相場は続きます。過去のデータを見ると、52週の高値から最終的な底値までの下落率の平均は33%(中央値は30%)となっています。またベアマーケット入りしてから底値に到達するまでは、平均123日(中央値は40日)かかっています。つまり、52週の高値からベアマーケットの底値を確認するまでには、平均225日(中央値99日)かかっていたことになります。ここから考えると今回のナスダック総合指数が底値に到達するのは、平均では7月10日あたり、中央値では4月15日あたりとなり、平均10,860(中央値11,350)付近まで下落することになります。
それではベアマーケット入りした後、つまりナスダック総合指数が20%下落した後のパフォーマンスですが、3ヶ月後は平均+11.8%(中央値+10.4%)、6ヶ月後は平均+17.7%(中央値+11.1%)、12ヶ月後では平均+21.7%(中央値+16%)とそれぞれ上昇しています。またナスダック総合指数が20%下落した後、同指数がプラスになった確率は以下の通りです。3ヶ月後66.7%、6ヶ月後83.3%、12ヶ月後75%となっています。これまでの12回のベアマーケットで、ナスダック総合しすが1年後も下がったのは1973年の第一次オイルショック、変動相場制移行、ニクソンショック、2000年のドットコムバブル崩壊、2009年の世界金融危機の時となっています。ベアマーケットに突入と聞くと、これからナスダック総合指数はさらに大きく下落しそうだという恐怖を覚えると思いますが、過去の例からはベアマーケットの領域に触れた後の同指数は、時間の経過とともに高い確率で上昇しているのです。不安を煽るように周りの声に引きずられて焦って売却するのではなく、特に中長期投資の方については冷静にコツコツと投資を続けることが大事だと思います。
もちろん、今回のベアマーケット入りの背景は過去のものとは異なります。新型コロナの際の、世界的な量的緩和政策によるバブル相場からの暴落であり、サプライチェーンの混乱やウクライナ危機による資源価格の高騰などが背景にあるため、どのような着地点となるかは誰にも分かりません。ただ、上記で述べた通り、過度に悲観的になることなく、あくまでも冷静に対応するべきです。暴落は中長期的な資産形成を狙っている方にとっては大きなチャンスになることも多いのです。これはナスダック総合指数以外にも当てはまります。繰り返しとなりますが、くれぐれも感情に身を任せた投資をしないようにご注意ください。
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東葛 コンサルティング

投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務、PE(プライベート・エクイティ)業務に従事していました。 経済、投資等についてのアドバイスを行っています。

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