一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 高山での医療1

夏山シーズンになると、標高3000m近い高山で過去山小屋で働いた経験から、「山岳医療」というものを意識するようになった。 私がいた山小屋は、山岳道路をシャトルバスが走り、高齢者でも子供でも標高2700mまでは日帰りでも上がって来られる場所。 簡単にアクセスできるがゆえに、登山装備や高山病への心得がなく上がってきて、山特有の怪我や高山病にかかってしまう方も少なくない。 山小屋にいると、小屋内でのお客様の接客以外にも、毎日の登山道の巡回、整備、非常時の誘導、急病者の一次対応などを求められる。 出くわしたのは、頂上から下山してくる高齢者がバランスを崩して足を怪我してしまい、担架搬送が必要な場面。 後から検証すると、足首を骨折していた模様。 もちろん救急隊員がすぐ近くにいるわけではなく、救急車を呼んだとしても、市内から2700mまであがってくるのに2時間。 そこから登山道を歩いて現場まで来ることを考えると、到底待ってはいられない。そのため、救急車を呼ぶのは最終手段で、安易に呼んではいけない、というのは暗黙のルール。 そのため、近くの山小屋や歩いている登山者の力を借りて、バスターミナルまで担架で運ぶことに。 私が到着した際には、すでにタオルで足首が固定されていたが、患者さんは痛そうにしている。 大きな岩が転がっている不安定な下り坂を運ばれているため、しっかり固定されていないと痛いはずである。 手当の方法を当時まだ知らなかった私から見ても、足首がぐらぐらし、痛そうなのは一目瞭然。 自分にもっと知識があり、少しでも痛みを緩和してあげられていたら・・・と今でも思う。 この日は平日であったため、土日に泊まりで来てくれる診療所の先生がおらず、 患者さんは救護経験豊富な山小屋スタッフに再度固定の手当てを受け、救急車が来やすい山の麓までバスで自力下山し、病院へ搬送されたとのこと。 この件を受けて翌日に実施された小屋での避難訓練と救護練習は、まさに自分ごとと捉えて身が入った訓練であった。 同時に、診療所の先生が週に1日、2日だけでも来てくれる体制が、どんなにありがたいことか。 多くの登山者、そして山小屋スタッフをどんなに安心させてくれるか、身をもって知ることになった。

The following two tabs change content below.

TAKAMASA.S

最新記事 by TAKAMASA.S (全て見る)

この記事をシェアする

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • LINEでシェア