ファッションとは、単なる「着るもの」以上の存在だと私は考えています。生地の手触り、色のニュアンス、シルエットの流れ、それらすべてが一つになり、身にまとう人の個性を語り始める。私たちデザイナーは、その「語り」をデザインする役割を担っています。トレンドを追うだけではなく、その時代が抱えるムードや、人々の心の奥底にある願望を読み取り、かたちにすること。それはまるで、時代の空気を織り込む作業のようなものです。
特に現代は、多様性が重視される時代。ジェンダー、年齢、国籍にとらわれない自由な表現が求められています。デザインするたび、私は「誰のために」「何を伝えたいのか」を問いかけ、自分自身と対話します。美しさとは一体何なのか、その答えを探し続けるのが、ファッションデザイナーという仕事の本質なのかもしれません。