2020年現在、日本には旧耐震基準の時代に建築されたマンションが、約38,000棟存在しているといわれています。
これらのマンションのほとんどは、一般に、現在のいわゆる新耐震基準を満たしておらず、このままでは今後起こるといわれている強い地震に対して危険な状態であると言われているものです。「建て替え又は耐震改修を行えばよいだろう」との考えが浮かびますが、これがそう簡単には進みません。様々な事情を持った権利者の考えをまとめることが必要だからです。
実際、これまでに建て替えが実現した旧耐震マンションは200棟程度で、対策を講じたいと考えながらもなかなか進まないものが非常に多いものと思われます。
現在、私は権利者7名のみの小さな旧耐震マンションの建て替え計画を、設計事務所の一員として担当しているのですが、この小さなマンションの建て替え計画ですら、なかなかスムーズには進みません。
民主主義の日本において、この「老朽マンション問題」を一気に解決する方法は存在しないのではないでしょうか。行政も「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」等で対策を促しているのですが、それほど大きな効果を出しているとは言えません。
このような中、一方で新築マンションはどんどん建設されていきます。これらもいつかは老朽マンションになります。
デベロッパー、建設業者、建築設計者、みな経済を無視して仕事をすることは出来ませんが、自分達の仕事が将来にどのような影響を与えるのかをしっかりと見据えた動きが必要です。