一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 2021年景気・株価の展望

新型コロナウイルス対応に明け暮れた2020年が間も無く終わろうとしています。2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、日本経済は好景気に沸くことが期待されていましたが、その期待は大きく裏切られることとなりました。コロナショックにより、飲食業や旅行業、アパレル業などを中心に倒産・廃業が相次ぎ、それに伴い雇用が失われ、実体経済も大きく落ち込むこととなりました。1〜3月期の実質GDP成長率は年率マイナス2.1%、4〜6月期に関しては年率マイナス29.2%となりました。まさに経済が蒸発したような状態となりました。7〜9月期は前の四半期の大きな落ち込みの反動で、年率プラス22.9%と大幅に増加しました。10〜12月期はまだ発表されていませんが、プラス成長の見通しとなっており、2020年全体でみると前年比5%前後のマイナスとなる見込みとなっています。

 

その一方で、世界各国の大規模な金融緩和や経済対策により、各国の株価は上昇し、米国株価は史上最高値を更新し、日経平均株価も29年ぶりの高値を更新することとなりました。この株高がバブルなのか、はたまた今後の景気回復の先行指標なのかは意見が分かれるところではありますが、市場関係者の株価予想を見てみるとポジティブなものが目立ちます。2021年中には30,000円台半ばまで上昇するとしている市場関係者もいました。また日本のみならず、米国、中国、欧州、新興国の経済、株価等に関しても予想は強気なものが大半を占めています。そもそも新型コロナウイルスの感染拡大で大きく沈み込んだ反動もあり、また中国経済の回復も予想以上のペースで進んでおり、そのため各国経済に対して強気の見方が多くなっていると考えられます。

 

私の景気・株価の予想は次の通りです。

 

まず日本経済についてですが、2020年の反動により2021年はプラス成長に転じる可能性は高いと思います。ただ、新型コロナウイルスの収束が見通せず、当面の間、感染者数は高止まりすることが予想され、ワクチンの接種もそれほど早い段階では見込めないことから、景気回復のスピードは非常に緩やかなものとなると考えます。春先から新型コロナの感染者数の増加はストップし、消費者のマインドが少しずつ回復していくと予想しますが、依然としてソーシャルディスタンスの確保等のニューノーマルが足かせとなり、実質GDPがコロナ禍前の水準を回復するのは2022年の半ば以降だと予想しています。結果的に2021年の実質経済成長率は、2020年の落ち込みの半分程度の回復(プラス2.5%程度)を予想しています。

 

一方で株価についてですが、プラス要因として、(1)各国の大型財政出動と大規模な金融緩和、(2)新型コロナウイルス感染症をめぐる状況の改善、(3)(相対的に出遅れていた日本の)デジタル化推進による生産性向上への期待、(4)中国経済の急回復が挙げられます。一方、マイナス要因としては(1)米国政治の不安定化、(2)円高リスク、(3)各国の財政金融政策の失敗、(4)新型コロナ沈静化の遅れ等が挙げられます。そうしたプラスとマイナスの天秤がどちらに傾くのかですが、現在の株式市場はプラス材料を先取りしており、この傾向はしばらく続くと考えられ、2021年の半ばまでに30,000円台に近づくのではないかと考えております。ただ、年後半に向けて好材料が出尽くし、マイナス要因が意識されるため、26,000円前後まで株価は戻ってくると予想しています。

なお、マイナス要因で円高リスクと書きましたが、私は2021年は円高が進むと考えています。21年は世界経済が正常化に向かうことになりますが、FRBの動向を注視すると当面は金融緩和策を継続する可能性が高く、円高ドル安基調は続くと予想します。

 

ただ、こうした2021年の景気や株価を考える上で最も重要な要素は「新型コロナ感染症の収束時期」です。新型コロナの第3波がどうなるのか、またそれ以降の波はどうなるのか。ワクチンの副作用の有無はどうか、ワクチンはどの程度のスピードで接種が進むのか。万が一、新型コロナ感染症の収束時期が2021年半ば以降にずれ込むことになれば、株式市場は再び昨年のような大きな波乱に見舞われることになると思います。この点については常に警戒する必要があります。

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東葛 コンサルティング

投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務、PE(プライベート・エクイティ)業務に従事していました。 経済、投資等についてのアドバイスを行っています。

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