一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

「ひとり情シス」という本を読みました。
本書は、現役のシステムエンジニアが体験した実話やノウハウをまとめた、いわゆるIT系の読み物です。
IT部門が消滅して、たった一人で情報システム業務をこなしていくことになったエンジニアの経験や工夫、
苦労や孤軍奮闘ぶりが具体例や技術を交えながら描かれています。
2018年に発行されていますが、一般的な技術書ではないので、今読んでもそれなりに楽しめると思います。
そして、扱っているテーマは、2020年の現在でも十分にアクチュアルなものです。

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本書の主要なテーマのひとつに「エンジニアとしてのロールモデルの提示」が挙げられます。
著者はたったひとりで情報システム部門を運営していくという困難なミッションを達成するために、具体的に次の手段を採用しています。
– 仮想化技術
– プログラミング

この二つの手段を用いて工数をとことん削減し、徹底的に業務を効率化すれば、一人でやっていくことも可能である。
それ以外の主要でない業務、専門性が高すぎる業務は、迷わず外部ベンダーにアウトソーシングする。
そしてさらに、その先のエンジニアの理想象として目指すべきが、「多能工エンジニア」である。
「多能工エンジニア」— これが本書で示されるロールモデルです。

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現実の私たちの職場環境では、ITエンジニア業務はとても細分化されています。
ネットワーク、サーバ、データベース、アプリケーション、全体を把握するのはなかなか困難です。
膨大な物理サーバを相手にして、頻繁にデータセンターに出入りし、ケーブルの配線からテプラの作成なんてことまでやっていたら、
もうそれだけでも手間がかかって仕方がなく、専属の部隊を用意するしかありません。
このような従来のやり方では、多能工エンジニアへのハードルは高いものでした。
しかし、昨今吹き荒れている仮想化やクラウド化による環境変化により、「多能工化」することへのハードルが大分下がりました。
同時に、その需要も高まっているようです。

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世の中に数多く存在する単能工エンジニアに刺激を与える一冊です。
なお、本書はオンプレミス前提で書かれていますが、クラウドでもこの辺りの事情は全く変わらないでしょう。
(「ひとり情シス 虎の巻」、成瀬雅光、日経BP社、)

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柳 明宏

ネットワークエンジニア。

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