デジタル世界の課題とNFTへの期待
インターネットは、さまざまなデジタルコンテンツへの自由なアクセスを可能にした。
しかしその反面、インターネット上でP2P取引を用いることで、音楽や動画など大量の
デジタルコンテンツがインターネット上で著作権所有者らに無断で取引されるという
社会問題を引き起こす。
これがきっかけで、DRM(デジタル著作権管理)やコピー防止技術が開発され、
プラットフォーマーによる配信サービスでデジタルコンテンツを楽しむ仕組みが整えられる。
しかし、現時点でデジタルコンテンツはそれぞれのプラットフォームで利用できるだけで、
プラットフォームを跨いで利用できるケースはほとんどない。
このため、購入したデジタルコンテンツが、プラットフォームのサービス停止により、
利用できなくなるという問題が起きている。
また、依然として違法に音楽や動画を配布するプラットフォームが存続していたり、
海賊版や模倣版などが横行したりしており、デジタルコンテンツを生み出したクリエイターらに、
適切に収益が還元されているとは言い難い状況。
また音楽や書籍、アートなどの著作権者はこれまではほぼ一次流通の収益しか還元されてない。
二次流通で作品が売れても、著作権者には1円も入らない。
二次流通市場にも経済活性化など一定の存在意義はあるといえる。
しかし一次流通と同様に多くの人々に価値を提供したにもかかわらず、
著作権者に何も還元されないのは「公平でない」という見方もある。
前編でも述べたように、デジタルデータはコピーが容易であるため、
本物か偽物かの判定が難しく、なおかつ価値が徐々に低減し、最終的にゼロになる傾向があるため、
著作物が正当な評価を受けることは困難。
また、コンテンツを配信するにあたってはプラットフォーマーに依存するケースが多いため、
プラットフォームの管理者が破綻した際にデータが無効になったり、
プラットフォームの経営状況に応じて管理者が恣意的にルールを変更したりするケースが問題となっている。
日本のデジタルコンテンツ業界は、前述の通りさまざまな課題を抱えており、
日本が誇る上質なコンテンツを十分に海外展開できているとは言い難い。
特定のプラットフォームに依存し、違法複製されやすかったデジタルコンテンツの
権利移転をNFTによって追跡・記録すれば、異なるプラットフォーム間の移動や、
制作者・販売者の二次流通より先での収益化も可能となる。
あらゆるデジタルコンテンツがNFTと紐づけば、正規コンテンツだけが
サイロ型のプラットフォームを跨いで流通するようになることも期待される。
また、クリエイターがNFTを活用し、ファンコミュニティを形成することで
独自の個人経済圏を生み出せるようになれば、クリエイター自身の収入が増え、
さらに良質なコンテンツが生み出されるという好循環がもたらされる可能性がある。
知的財産(IP)ホルダーの企業も、二次流通以降の売買収益が還元されることで
IPによる長期的な収益が見込める。
プラットフォームを跨いでコンテンツを利用できるようになれば、ユーザーは
コンテンツを長期間楽しめる。
ユースケースの幅も広がって新たな市場が開拓されるとともに、デジタルコンテンツ市場全体が
活性化する。