次に“筋肉の質”について考えてみましょう。
筋原線維にはタイプⅠとタイプⅡaとタイプⅡbの3種類があるのです。
タイプⅠは赤筋や遅筋とも呼ばれます。このタイプは酸素をたくさん蓄積することが出来、繰り返し収縮しても疲労しにくく、長時間にわたって力を発揮し続けます。ただ収縮スピードが遅く、瞬間的に大きな力を出すのには不向きです。タイプⅠは<strong>加齢で衰えにくい</strong>という特徴があります。
タイプⅡbは白筋や速筋とも呼ばれ、収縮速度が速いので瞬発的高出力な運動にむいているものの、疲れやすい長時間の収縮は苦手という特徴があります。このタイプは<strong>衰えやすく、二十歳を過ぎると低下が始まる</strong>と言われています。
筋肉の力は瞬間的にどれだけの力を出せるかという“筋力”とどれだけ力を出し続けられるかという“筋持久力”の二つが必要になりますが、そのためには前者にはタイプⅡb、後者にはタイプⅠが必要となります。
またタイプⅡbは衰えやすいという特徴があるため、<strong>高年齢になると筋肉の全体的な低下だけでなく、タイプⅠに対してタイプⅡbが低下し素早い運動が出来なくなってしまいます。</strong>そうすると急な回避動作が出来なくなるので、転倒をしやすくなり、骨折による健康寿命の低下を招く恐れがあります。実は比較的若い方でもそれは同じで、お子さんの運動会でお父さんが転ぶのもタイプⅡbの低下が関係します。
この観点からも<strong>タイプⅡbを鍛えるために高負荷反復トレーニング(結果として無酸素運動)が必要となる</strong>のです。
筋肉強化のためのトレーニングは、マシンや重量物を使った負荷トレーニングやスクワットなど自重を使ったトレーニング、スプリント(短距離走)などが有効です。
もちろんいくら筋肉強化のために高負荷のトレーニングを行っても、筋肉を作る材料が不足しては意味はないので、たんぱく質をしっかり摂取した上で行なわないと効果はありません。有酸素運動、無酸素運動とも、良質のタンパク質摂取が運動の前提となることを覚えておいてくださいね。
これまでのお話の結論として、有酸素運動・無酸素運動双方とも必要になるわけですが、「そうは言っても激しい運動は急に出来ない…。」というのが皆様の本音だと思います。
実際、春先は「暖かくなったし、新年度なので新しいことを始めよう!」とジム通いや筋トレを始めて身体を痛める人が増える時期でもあります。
そういう意味では以前にお伝えしたインターバルトレーニング(ダッシュとスローランを繰り返す運動。最初は早歩きとゆっくり歩きを繰り返すだけでも良い。)は道具や場所を選ばず、自分の体力に合わせて負荷をアレンジしながら手軽に挑戦できるので、是非やってみてはどうでしょうか?
参考:ちなみにタイプⅡbをトレーニングで鍛えるとタイプⅡaに変わります。タイプⅡaはⅠとⅡbの中間の特徴を持ち、鍛えないとⅡbに戻るという面白い特性があります。