育児の悩み、うつ病など気分の問題がきっかけであっても、
生活状況を聞いていくなかで、夫婦関係にトラブルを抱えている場合が少なくありません。
夫婦関係が良好であれば、子育ての悩みについても前向きに協力していけるし、外の世界で色々なストレスがあってもパートナーに聞いてもらい気持ちを癒していくことができるけれど、パートナーに相談しても、「あなたが 悪いんじゃない?」などと言われてしまうと、気持ちのやり場がなくなってしまい、前向きな問題解決を進めていくことが難しくなります。
対人関係療法の水島広子先生によると、対人関係のストレスはすべて「役割期待のずれ」という概念で捉えられるということです。
「〇〇してほしかった」のにしてもらえなかった、とか、「〇〇しないでほしかった」のにされてしまった、という、
自分と相手の認識と行動のずれ、と捉えていくのです。
とても分かりやすく役に立つ考え方なので、ご紹介したいと思います。
「パートナー関係のストレスは役割期待のずれ」、
こう考えると、まずは「自分が相手に求めている役割ってなんだろう?」「相手に望んでいることを分かりやすく伝えられているかな」「それって相手が本当に出来ることなのだろうか」、「相手が自分に求めている役割ってなんだろう?」・・・と、色々と前向きに考えていくことができます。
家庭のことでいえば、特に女性は家事育児を要領よくこなせる一方で、男性はそうではなく、女性が男性を責める、それに対して男性が反撃したり、引きこもってしまう、という形で関係が悪化していることが多いです。
こんなとき、どうすれば良いのでしょうか。対人関係療法や、私自身の臨床経験をもとに、具体的なステップを考えていきます。
パートナーとの関係を改善するためのステップ
・男性も、女性も、それぞれの立場で、できること、最善と思えることをいつも一生懸命やっています。それがただ、相手が期待する形とずれていたり(相手の期待が自分が出来ることを超えているという場合も含めて)、自分の思いが伝わっていないことで、すれ違いが生じているのです。まずは、相手とのコミュニケーションをとるまえに、がんばっている自分自身をよく労ってあげてほしいです。自分自身に「いつもがんばっているよね」「本当にお疲れ様」「本当は〇〇してほしいのに、してもらえないと嫌な気持ちになってしまうよね」と声をかけ、その言葉を受け取った時の感情をしっかり味わってください。自分の気持ちが少しでも認められることで、パートナーと話し合う土台の落ち着いた状態を作りやすくなります。
・つぎに、相手に対する自分の本当の思いを整理します。大抵、根っこの部分は、「大切にしてほしい」ということが多い様に思います。その場合、相手にどんな行動をとってもらえば、「自分は大切にされている」と感じるのか、また、相手の立場に立って、それが可能そうかどうか、具体的に考えてみましょう。まずは、「顔を見ておはようと言ってほしい」「行ってきますと言ってほしい」「〇〇をしたらありがとうと言ってほしい」などからでも良いと思います。
・つぎに、相手に話し合いのための時間をとってほしいことを伝えます(相手の都合を尊重することはもちろん大切です)
・そして、自分の本当の思い(大切にしてほしい、〇〇の状態だと、悲しく思ってしまう、など、自分自身の気持ち)と、相手に求めることを具体的に伝えます。
・相手としっかりコミュニケーションをとり、相手の気持ちも理解しようと努め、相手への期待の現実的な落としどころを探ります。
・しっかり伝わった、聞いてもらえた、と思ったら、感謝のことば「ありがとう」を伝えます。
それまでずっと習慣になってきた行動を変える、ということは、自分にとっても、相手にとっても勇気と根気のいる大変なことです。なかなか変わらなくても、「そんなものだ」と思い、取り組もうとしてくれたこと自体を感謝し、「期待が高かったかな?」「何ならできるかな?」とお互いに話し合いを続けることが大切です。
みなさんのパートナー関係が心地よいものでありますように祈っています♡
参考:水島広子先生 「対人関係療法で改善する 夫婦・パートナー関係」 創元社 2015