一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 老後資金作りに向けて

2022年、老後資金に関係する年金などの制度に関して様々な改正がありました。主な改正は次の通りです。

1)年金受給開始時期が「70歳まで」から「75歳まで」に変更となりました。これに伴って年金の繰り下げ受給も75歳まで可能となります。受給開始を1ヶ月遅らせるたびに0.7%の増額となります。そのため75歳まで受給を遅らせることで、年金額が84%もアップすることになります。

2)基礎年金(国民年金)45年加入案が浮上しています。

3)在職老齢年金見直しと在職定時改定が導入されました。在職老齢年金は、一定以上の収入があると年金が減額されます。しかし6064歳の基準額が月28万円から47万円にアップして、減額されにくくなりました。これに加えて、65歳以降も厚生年金に加入して働く場合、年1回、働いた分だけ年金額が増額される在職定時改定も導入されました。

4)パートなど短時間労働者も厚生年金に加入しやすくなりました。これまでは従業員501人以上の企業に勤め、勤務期間1年以上が見込める人が対象でしたが、従業員101人以上で2ヶ月超勤務などに拡大されました。士業の個人事務所も対象となり、今後も拡大が続く予定となっています。

5)公的年金受給開始年齢の拡大に伴い、iDeCoの加入上限年齢や受取開始期間の上限年齢が引き上げられました。

老後の収入として、死ぬまで受給できるのが公的年金です。この公的年金を増やすことが老後資金づくりの核となります。まずは受給を繰り下げたり、パート勤務でも厚生年金に加入するなどして、公的年金の増額を図ることが重要です。その上で足りない額を資産運用で用意する、そして元気であれば高齢になっても働き続けて定期収入を確保することが、これからの老後資金作りのセオリーになってきます。

<老後資金を作る上で重要なNISA。その改正の行方は?>

投資のキャピタル・ゲインやインカム・ゲインが非課税になるのが「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」や「一般NISA」です。iDeCo(個人型確定拠出年金)のように掛け金が所得から控除されるメリットはないものの、売却益や配当金が非課税になるメリットは非常に大きいです。

そして、iDeCo60歳まで途中で換金することは不可能であるのに対して、NISAは途中で換金することができる点が大きな特徴です。定年前に使う可能性がある資金の運用については、NISAが選択肢になります。

さらに、iDeCoは勤め先の退職金制度などの要因によって掛け金の上限が変わるため、開始する時や転職する時に、勤務先に証明書を書いてもらう手続きが必要になります。それに対してNISAは金融機関で口座を開設すれば始めることができ、転職する際の手続きも必要ないという手軽さも評価ポイントとして挙げられます。

NISAには現状では、つみたてNISAと一般NISA、ジュニアNISAの制度があります。つみたてNISAは金融庁が定めた基準を満たす投資信託やETFを定時・定額で買い付ける制度です。一方で一般NISAは一括投資、積立投資どちらも可能となっています。対象商品は金融機関ごとに異なり、外国株で積立投資ができる証券会社もあります。この2つの制度は併用することができないため、利用する場合にはどちらかを選択する必要があります。

このNISAは現在、各種メディア等でも報道されている通り、岸田政権が打ち出した「資産所得倍増プラン」に伴って、制度見直しが発表されました。主な変更点は以下の3点となります。

1)現行の一般NISA5年、つみたてNISA20年までと期間が制限されていましたが、新制度では恒久化、無期限となります。

2)年間の投資額が現行の一般NISA120万円、つみたてNISA40万円で、いずれかにしか投資できませんでした。しかし、新NISAでは成長投資枠が240万円、つみたてNISA120万円となり、どちらにも投資ができるようになります。

3)非課税となる限度額が一般NISA600万円、つみたてNISA800万円でしたが、これからは1800万円までとなり、このうち成長投資枠は1200万円まで投資可能になります。

一人一人の年齢や所得等様々な条件によって状況は異なりますが、間違いなく今後はNISAiDeCoなどを活用した資金運用は重要なテーマとなります。是非、今後の動向について注視してください。

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東葛 コンサルティング

投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務、PE(プライベート・エクイティ)業務に従事していました。 経済、投資等についてのアドバイスを行っています。

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