今年度、当農園は新たな取り組みを始めました。
それは、「完全無農薬栽培の米作り」です。
当農園は私が7年前に脱サラし、水稲農家としてやってきた父親の田畑を継ぐ形で始めましたが、米の売価が安く水稲農家として経営していくには無理がある、ということで、私はメインは露地野菜農家としてスタートしました。
しかし、約20年前に私の祖父が中心となり、私の集落にある田んぼを国庫補助事業として国から億単位の補助金を得て圃場整備をしたので、田んぼを捨てきることもできず、水稲兼露地野菜農家となったわけです。
実際に米作りをする中で、確かに慣行栽培の米作りは、今の日本では限界に来ていると言うことが見えてきました。細かいことはさておき、分かりやすく言えばお米1俵(約60キロ)を栽培するのに経費は1万5千円程度の経費がかかると昨今言われています。コロナ禍の影響により、あらゆる資材が高騰したので、去年あたりからもっと経費は増えているでしょう。にもかかわらず、お米1俵あたりの売値は、農家からJAに売った場合、茨城ではおよそ1万2千円くらいですから、単純に1俵あたり4千円前後の赤字なわけです。
採算が合わなければやめるしかない。これが日本の米農家の現実です。
しかし、この調子で全ての米農家が居なくなってもいいのでしょうか。
米で事業を成立させることが果たして不可能なことなのだろうか?と思うなかで、その答えを出すきっかけが一昨年ありました。
よくお世話になっている肥料会社の先代の社長が、私に教えてくれたのです。
「高品質なものを作れる技術があれば、米だって高く売れる。誰でも簡単に作れるものには価値はない。俺が指導した東北の米農家は、1俵2万円で売っている。それも予約でなくなり、買ったお客からはみんなに喜ばれている。農業に限らず商売をやると言うことは、お客がどんなものを欲しがっているかを知り、それを確実に提供できることだ。」ということでした。
この言葉は、ずっと自分の中に引っかかっていて、この辺の米でも、やり方次第で勝負できるのだろうか・・・?
と自問する日々が続きました。
そんなときに、一つの転機が昨年ありました。JAの露地野菜の部会で一緒に役員をやっている仲間が、無農薬米をを栽培していて、徐々に結果が出てきているという話を聞いたのです。
彼の話を色々聞いていくと、米もそれなりの単価で勝負できると教えてくれたのです。
ならば自分もやってみよう!と、半信半疑ながら、10aの一つの圃場を試験栽培圃場として、播種の段階からすべて完全無農薬で取り組むことを決めたのです。
それまで父から教わっていた慣行栽培では考えられないような技術や理論があり、この歳で一から勉強し直し。
草取りは少しやらないといけませんが、それも高単価で求めてくれるお客様がいるのだと思うと、多少のつらさなど何とも思いません。当農場のお米を食べて全員が満面の笑みを浮かべてくれることを心に思い描きながら、今日も家族総出で草取りに勤しみます。